「グザヴィエ・ドランの新たな一面」トム・アット・ザ・ファーム ジンジャー・ベイカーさんの映画レビュー(感想・評価)
グザヴィエ・ドランの新たな一面
グザヴィエ・ドランの監督作品は「たかが世界の終わり」と本作のみ見てなかったので鑑賞。彼の演出の新たな一面を見た。
ゲイの主人公トムの恋人ギヨーム(男)が亡くなり、その葬儀のために家に行ったら家族の事情と脅迫により主人公はその家に滞在して…というストーリー。
まず、ストーリーは先が読めず、新鮮さを感じた。一種のサスペンスであるが、鑑賞者にただ恐怖を与えるのではなく、鑑賞者を心理的に追い込む描写である。先が読めない怖さもあるが、とにかくトムの心情の変化も怖い。そして、個人的にはギヨームのお母さんが何考えてるかわからなくてとにかく怖かった。
サスペンスってこともあって、演出はこれまでのグザヴィエ・ドランの作品とはかなり異なった。今までは鮮やかな色彩を用いたり、非現実的なシーンによる心情描写が特徴的に見られたが、本作にはそのようなものは無い。カメラワークなどの演出によって、じわじわと鑑賞者は心理的に追い詰められるのである。
グザヴィエ・ドランはゲイをテーマにした作品が多い。彼はマイノリティとマジョリティの対比ってのが上手いし、テーマが重いんだけど演出によって鑑賞者を引きつけることに卓越してる。
なぜか彼の作品を見ると不思議な感覚に陥る。一言で言えばクセが強いのかもしれない。好きな監督の一人である。
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