「【ボスニア・ヘルツェゴヴィナに暮らす被差別民族ロマの、貧しい一家に起きた事をドキュメンタリータッチ描き出した作品。】」鉄くず拾いの物語 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【ボスニア・ヘルツェゴヴィナに暮らす被差別民族ロマの、貧しい一家に起きた事をドキュメンタリータッチ描き出した作品。】
■ボスニア・ヘルツェゴヴィナで貧しくも幸福に暮らすロマの一家。
夫のナジフ(本人)の仕事は、鉄くず拾い。
一日働いても、稼ぎは僅か。
だが、妻・セナダ(本人)と二人の幼い娘と細やかな幸福の中、暮らしている。
ある日、妊娠中の妻・セナダは激しい腹痛に襲われ病院に行く。
夫のナジフは医師から今すぐに手術をしなければ危険な状態だと告げられるが、保険証を持っていない彼らは手術代980マルク(約7万円)が支払えず…。
◆感想
・今作は、ヨーロッパで歴史的に遊牧民として暮らして来たロマ(かつては、ジプシーと呼ばれていた)の厳しい現実を映し出している。
・一日掛かって、廃車を解体して、解体業者に持ち込んでも、稼ぎは10数マルク。
健康保険証もない。
・ボスニア・ヘルツェゴヴィナ紛争に駆り出されても、彼らには恩賞金は一切出ない。
<今作はそんな厳しい生活の中、流産した妻を助けるために自らの車を解体し、助ける夫の姿が描かれている。又、彼を助ける同じくロマと思われる近隣の人々の姿も心を打つ。
だが、暗澹たる気持ちになったのは、今作で本人役で出演したナジフ氏が、映画の成功により仲間から疎外され、希望したドイツへの亡命も叶わず、僅か48歳で亡くなったという事実である。
死因は不明とされているが・・。
ロマの民が、ヨーロッパで生きる厳しさが、そのような事実からも伝わってくる作品でもある。>
彼の運命でしょうね。貴殿の語る後日談だけが唯一無二の救いだと私は思います。
貧困の根拠を『ロマ』と言うアイデンティティだけに押し付けるのは、いじけ過ぎで、所詮フィクションでしょうが、この男性は思慮深さにかけると私は感じました。
亡命も叶わず亡くなったと言う話にもまゆつばになっている自分が怖いです。