「どうしても気になる脚本の粗」プリズナーズ arakazuさんの映画レビュー(感想・評価)
どうしても気になる脚本の粗
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『灼熱の魂』のドゥニ・ヴィルヌーヴのハリウッドデビュー作。
正直、前作のような衝撃は感じられず。サイコミステリーとしては、然程新鮮味はない。(ハリウッドデビューで監督にもたらされる豪華なキャスティングが、キャラクターの役回りを予想することを容易にしてしまう。)
多分脚本家の狙い、言いたかったことは、苦難に見舞われた時に、人間はどんなふうに罪深い存在になれるのか?ということではなかったかと思う。
ただ、言いたいことを伝えるためのシーンがどうにもご都合主義に感じられてしまう。
ロキ刑事がいつも単独行動なのは、犯罪捜査ものとして相当違和感があるし、人格者であるように見えるケラーが一線を越えるに当たり(単独でも十分可能なのに)友人を巻き込むのも解せない(同じ悲劇に見舞われても反応の仕方は違うことを際立たせたかったのだろうが)し、「常に非常事態に備えよ」と息子に言って聞かせているケラーが、安易に犯人の元に乗り込み、“背中を向けて”、真実を知っていることを告げるのは余りにも“備えていない”!
ラストシーン、現場で作業している警察関係者がうじゃうじゃいただろうにあの時点まで誰もケラーの存在に気づかなかったのもおかしい。その他にも解せないところが多々ある。
実は二度観たのだが、観れば観るほど粗が見えるのは如何ともしがたい。
ロジャー・ディーキンスが切り取る身体が芯から冷えてくるような重厚な映像、ポール・ダノの怪演、ジェイク・ギレンホールのセクシーなみだれ髪など見所もあるので、どうしても脚本の粗が気になりました。
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