劇場公開日 2014年5月3日

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「倫理観を持つ者が一線を越えた際の狂気と葛藤が執拗に描かれていました。」プリズナーズ Opportunity Costさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5倫理観を持つ者が一線を越えた際の狂気と葛藤が執拗に描かれていました。

2014年5月19日
PCから投稿

悲しい

怖い

良かった。

失踪した娘の父親と捜索する刑事、両者の視点で交互に描かれる本作。
或る時点で一線を越えた父親は「信頼できない語り手」としても機能しています。

繰り返される常軌を逸した行為。
行為を知らされ感化される者。行為に気が付かない者、知られまいとする者。
周囲の人間が禍々しい濁流に巻き込まれる中で正義も真実も見えなくなります。
そのため最後まで展開の選択肢が複数残ると同時に自らの倫理観に訴えかける話運びとなるため、自ずと話に惹き込まれていました。

役者陣は総じて良かった。

特筆すべきはヒュー・ジャックマン演じる父親ケラー。
或る時点を境に狂気に憑りつかれた彼の顔や佇まいには思わず威圧され怖れを抱きました。
また揺り返しで何度も訪れる自問自答、葛藤。
その弱さや自己肯定の過程の表現も素晴らしかったです。

対するポール・ダノ演じる容疑者アレックスも良かった。
知能指数が小学生並みの彼がフッとした瞬間に浮かべる掴み処の無い表情。
そして何かが含まれた怪しい言動。
彼の存在がケラーの原動力となり、話自体も引っ張っていました。
また或る時点の彼の姿。
余りの光景に思わず息を呑み…劇場全体の空気も止まっていました。

話の中で散りばめられた要素が終盤一気に回収され。
題名の意味を初めて理解すると共に残るのは爽快感…ではなく別の感情。
様々な感情が入り混じり整理が付かない感情を抱えたまま劇場を後にしました。

倫理観を持つ者が一線を越えた際の狂気と葛藤を描いた本作。

正直、或る登場人物の存在が話のリアリティラインを著しく下げている。
ひいては上映時間153分、と無駄に間延びさせてしまったという残念な点はありますが。
主要人物達の葛藤に次ぐ葛藤を描くための要素と考えれば全く不要とは言えず難しい所でした。

お子様を持つ方々であれば更に父親ケラーの気持ちが理解出来て、話の展開と共に整理出来ない気持ちが更に渦巻くと思います。
タイプの異なる親達を『自分であればどうしてしまうか』という観点で追いかける見方もあると思います。

オススメです。

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Opportunity Cost