「遅ればせながら、「ミケランジェロ・プロジェクト」を鑑賞。ジョージ・...」ミケランジェロ・プロジェクト 天秤座ルネッサンスさんの映画レビュー(感想・評価)
遅ればせながら、「ミケランジェロ・プロジェクト」を鑑賞。ジョージ・...
遅ればせながら、「ミケランジェロ・プロジェクト」を鑑賞。ジョージ・クルーニーの監督作。自身の主演以外にも、マット・デイモン、ケイト・ブランシェット、ビル・マーレイなどと、なかなか豪華なキャスティングなので、期待値も自ずと上がっていた。
クルーニーの過去の作風から考えてもシリアスな社会派ドラマになるであろうことは間違いなかったが、開始早々に意外にも小気味よい喜劇性が垣間見え、豪華なキャスティングも含めてこれはもしやクルーニー版「オーシャンズ11」になるのでは?と一瞬邪念が過ぎるも、やはりそこまで娯楽性を追求することはなく、いつものクルーニー節に収まった作品となった。
ただ、戦時中に粗悪に扱われ、失われかけていた美術品を救出する、という着眼点以上の面白さを作品から見出すことは困難で、豪華なキャストもここでは今一つ活かしきれずに終わった感が否めない。それはそのまま役柄にも通じ、兵士ではない学芸員、美術商、彫刻家などといった素人の寄せ集めからなる「モニュメント・メン」という一大プロジェクトという面白味を持ちながら、彼らがそれぞれの特性、個性、長所、分野性を活かした活躍を見せることが極めて少ないため、役柄のひとつひとつも輝ききれずに終わってしまっているのが極めて遺憾である。
恐らくは、クルーニーはこの映画で、美術品を守る者たちの姿を通じて、その先に見える戦争の悲惨さとナチスないしヒットラーの残虐さを描こうとしていたことは予想がつく。そしてまた、作中でのクルーニーのセリフ「人の命は失われてもやがてまた増える。だが文化や歴史は失ったが最後、灰になるだけだ」(記憶を辿って書いているので意訳を含む)は、映画という芸術を創造する立場にいるクルーニーの心の声だったのかもしれないと思う。しかし、残念ながらその思いは観客に伝わりきらなかったのではないだろうか。
しかしながら、この作品に登場した人々がなければ、我々が親しい著名な芸術作品を目にすることができなかったかもしれないと思うと、感慨深いものがある。とは言え、その史実以上の感銘が作品からは得られないのが残念だ。
これが史実に基づいた物語である以上、「ルパン三世」の如くしろ、とはもちろん言わない。いや、いっそ「ルパン三世」ほどに外連味を効かせた娯楽作に仕上げていたなら、より面白く、かつ秘めたメッセージをよりうまく表現できたのかもしれない題材だった。