劇場公開日 2014年2月22日

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「綺麗で幻想的なシーンもあって、家族揃って観たい作品だよね」ジョバンニの島 Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0綺麗で幻想的なシーンもあって、家族揃って観たい作品だよね

2014年3月9日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

泣ける

悲しい

日本音楽事業者協会創立50周年記念に本作を制作する事になったのか?その経緯を全く知らないけれど予想以上に良い作品だった。

第二次世界大戦当時の頃を描いた「風たちぬ」そして実写の「永遠のゼロ」が続けて大ヒットをしている昨今であるが、この両者の作品以上に、この作品からは、本当の意味で、何故戦争があってはならないのか?
人類にとって、他者の生命や、運命を傷つけてしまう戦争と言う怪物の存在こそが、如何に無益な存在であるのかと言う事を、宮沢賢治の銀河鉄道を巧く軸にして描き出した秀作である。

そして実写で描く事よりも、アニメにより、フィクションとして、ファンタジー作品として描き出す事で、更に一層実写では描く事が出来難い、人類愛、家族愛、郷土愛が淡々と胸に迫り来る感動作であった。

ともするとこの時代を描いている映画は、戦争責任と言う事にばかり作品のテーマや方向が向き、どちらが善でどちらの国家や政府が悪なのか?と言う様に戦争責任だけを問うような事だけが、作品の評価にも繋がって来てしまう。
そこに戦争がテーマの作品に於いて難しさが有り、敢えて本作が個人レベルの問題として、家族の話として本作を描ききっていて、的を直球で射る事をしなかった事で、逆説的に戦争の悲劇が伝わる作品に仕上がっていたように感じられるのだ。

罪を憎んで人を憎まずと言うように、人間は誰でも過ちを犯し、罪を犯さない人間などいないのだし、そんな人間が行う政治の世界に於いても、途方も無い重大な過ちをする事も有り、ましてや、過去を取り消す事は不可能なのだが、過去の換えられない問題ばかりを掘り起こし前向きに考える事より後ろ向きになる傾向の強い現実の世界で、このような作品が、今誕生した事は喜ばしい事だ。

戦争体験世代の仲代達也、そして八千草薫の両氏が本作の声優を務めている点も非常に素晴らしい要素だ。
只単にベテラン俳優と言うのみではなく、現実に戦争体験者である人々が声を担当している事で、芝居で無い、実にリアルな響き一体となって伝わって来る。

誰もが個人レベルでは、戦争を望んでいる人間などはいない。ましてや、子供達は全くの被害者である。
戦争被害者も戦争加害者も両者共々が皆戦争被害者なのだと言う事実を知る事こそ、戦争を無くす社会には必要不可欠な基本的な考え方ではないだろうか?
流石は、日本音楽事業者協会の作品だ、ラストの歌は胸に響き感動的だった。

ryuu topiann