「古典的ディストピアで生きる虫のイタコと人類の愚かさが葛藤する様を描く」風の谷のナウシカ 葵須さんの映画レビュー(感想・評価)
古典的ディストピアで生きる虫のイタコと人類の愚かさが葛藤する様を描く
風の谷のナウシカの評判は聞いていたが、何故か今まで見たことが無かった。最近宮崎駿、ジブリ作品が自分の中で流行っていたのでその一環で見ることとなった。
先にもののけ姫や千と千尋を見た自分としては、作画は期待以上ではなかった。世界観については、暗闇でイルミネーションのように光り中を漂うクラゲのような生き物や夜行性のきのこ等を見て、アバターを思い出した。頭の中でアバターの最新のリアルな表現を思い出してしまうと、少し見劣りして見えてしまった(これは古典的名作が抱えるどうしようもない欠点だ)。アバターに似ている、という感覚について、ネットで他にもどうようのことを思っている人がいないか調べてみると、アバターのJ・キャメロン監督はジブリのファンだということで、アバターがこの作品から影響を受けている可能性はあるだろう。他にも、この作品をみながらterrariaの不浄の地を思い出した。他にも一部が似た世界観を持つ映像作品、ゲームはあると思う。人間にとっては地獄ではあるが、植物や昆虫にとっては住みやすい、彼らがより発展した世界というのはディストピアながら憧れるところがある。今後もよりリアルだったりリアルでないにしろ味のあるそういう表現に出会いたいものだ。
世界観についての徒然な思いはそのような感じだった。さて、内容について、そのテーマについてである。あまり印象に残らなかった。つまり、心の奥まで響かなかった。何故かと考えると、時代性が合わなかったり、すでに言い古されていたり、すでにナウシカ後に作られたナウシカをオマージュした作品を見てきたからかもしれない(テキトーに推量している)。こういうことは時々ある。もっと若い頃に見ていれば感動したかもしれない。一つ個人的に心当たりがあるのは、今作を見ながら、もののけ姫は今作をよりアップデートしたものだな、という印象があったことだ。
テーマ性は良い。森林を破壊するな。自然を破壊だけで人間の手で屈服させることはできないし、そういう考えで自然と付き合うこと自体が人類の破滅を招くということ。しかし、そのテーマ性はなぜか心に深く重い意義を持って心に波紋を浮かべることはなかった。登場人物それぞれが持つ葛藤や決断も悪くない。虫に恨みを持つクシャナ、同胞をやられ復習を誓うアスベル。悪くないのだが。
最後の奇跡について。映画を見た後、岡田斗司夫ゼミの該当のYoutube動画を見た後に思い出しながら書いているので、岡田斗司夫の考えや彼が語る宮崎駿像等が影響している部分もあるが、作品において、ご都合主義的に一人の人物(特に主人公やヒロイン)にそれまで説明しなかった幸運がフォーカスすることと、その様を登場人物が感動して見る様を見せる方法はうまくない。ナウシカが蘇ることは嬉しい、それを共感することができるが、その単純な感情を喜べる対象年齢は低く思える(じゃあどう表現すべきかは考えていきたい。
最後に、わがままな思いであるが、巨神兵についてはもう少し活躍が見たかった。