「人生の真髄」LIFE! arakazuさんの映画レビュー(感想・評価)
人生の真髄
今作は1947年ダニー・ケイ主演作『虹を掴む男』のリメイク作品。
しかし、オリジナルとの共通点は“代わり映えのしない毎日を送る空想癖のある男”というウォルターのキャラクターの一部のみ。
オリジナルは、ウォルターの空想シーンでダニー・ケイの芸達者ぶりを見せるスター映画だったが、こちらは、それまでは空想するしかなかった景色やなりたかった自分を現実のものにしていく人生賛歌になっている。
リメイク作品というのは、大抵オリジナルには及ばないものだが、このリメイクのアイディアがとても賢かったと思う。
アクション映画並みのウォルターの空想シーンはリメイクならではだが、それ以上に、現実である直線的なニューヨークの街並みと曲線的なアイスランドやヒマラヤの自然の対比が鮮やかで美しい。
父親が母親に贈ったピアノ、フィギュア、母親お手製のケーキ、バックパック、スケートボード、そして(LIFE誌のスローガンが刻印された)ショーンから贈られたサイフ。これらの小道具による伏線の張り方も心憎いし、LIFE誌の休刊、アイスランドの火山噴火など現実のニュースもストーリーに巧みに取り込んでいる。
ウォルターの冒険の第一歩を後押しするArcade Fire の「Wake Up」、
David Bowieの「Space Oddity」など音楽の使いどころも絶妙で見事だった。
LIFE社のスローガンが観る人ひとりひとりの心に響く。
どんな景色が見たかったのか?
どんな大人になりたかったのか?
立ち止まって考える時は誰にでも来る。
その時、一歩を踏み出すのか?
その勇気が持てるのか?
その先にバラ色の人生が待っていることはないだろう。
でも、少なくともウォルターは見たい景色を見て、自分がどんな大人になりたかったのか思い出したはずだ。