あなたを抱きしめる日までのレビュー・感想・評価
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教会の戒律とは。。。
スティーブン・フリアーズの映画は好きなはずだったのだが、幾本かごぶさたをしてしまった。
修道院にいた女の子が一度の過ちで、妊娠してしまい、そのときに産んだ息子と引き離されてしまい、50年たってその息子を探そうとする。
アイルランドの教会が、そうやって産まれた私生児を売っていたというのも驚きだし、ジェーン・ラッセルが買っていったというのも驚きである。
教会は、快楽に溺れるのを厳しく戒めるのに、人身売買はよしとするのか。
母親が息子を探すのを禁じる契約をかわすのはいいとして、息子が探しに来ても本当のことを言わないというのは、やはり納得できない。
この出来事が記事になり、こうやって映画化もされたわけだから、広く周知されることになる。
どのような経緯で子どもが産まれたとしても、第三者が正当な理由もなしに母と子を引き離すことはやってはならない。
フィロミナ(ジュディ・デンチ)は赦しを与えたが、マーティン(スティーブ・クーガン)はそうはいかない。
僕も許せない。
総てを抱きしめる母親。
事実は小説よりも映画よりも…本当に奇なりだと思う。
今作を観て、これが実話だとは信じ難いほどに驚いた。
敬虔なカトリックである少女が若い日に男性と恋に落ち
子供ができた。未婚の女…というだけでも重罪だという
時代と境遇が、この少女に過酷な運命を与えたのだった。
強制修道院に入れられた彼女は、息子を産み育てるも
3歳のある日、修道院は息子をどこかへ養子に出してまう。
…それから50年。
老境に入った主婦フィロミナは、娘に秘密を打ち明ける。
何とかして逢いたいという母の願いを叶えるため、娘は
元エリート記者のマーティンに取材を願い出るのだが、
初めはあまり乗り気でなかった彼が、
フィロミナの持つ個性に翻弄されていく様子が面白い。
話が話のため、どす暗くなりそうな取材旅になるところを、
徹底してメルヘン調、ポジティブ志向のフィロミナである。
それを演じるのがJ・デンチ^^;
うわ~。大丈夫?なんて思うところだが、これがまた巧い!
可愛いオバ(オバア?)ちゃんを見事に演じ切っている。
いよいよ耳が遠くなってきた彼女が台詞をテープに起こし、
耳で聞いて覚えたという、延々続く長台詞をご堪能下さい。
監督に企画を持ち込んだというマーティン役のS・クーガン。
彼もまた絶妙だ。フィロミナとは一定の距離を保ちながら、
どんどん飴オバちゃん(失礼^^;)に感化されていく相棒記者。
この記事で再起を図りたい彼、お涙頂戴モノを描く予定が、
トンデモない事実へと突きあたったことで記者魂に炎が…。
ベタな邦題の「抱きしめる日まで」、観るまではほとんどが
こう思ったはずだ。映画のラストで彼女は息子と再会し、
その手で50年ぶりに息子を抱きしめる涙涙のラストだろうと。
意外と早い段階で彼女と記者は真実に突きあたる。そして…
そのまま帰国するか、米国に残るか、を選択するのである。
もしも私がフィロミナだったら(滞在費のことを考えながらも)
やっぱり残るだろうな、と思う。だってもっと知りたいじゃん!
彼が養子になった先で、どんな風に育てられ、成長したのか。
残念ながら今作では、彼の足跡にそこまでは踏み込まない。
もちろん実話であることや、当人のプライバシーの問題など、
色々あったのだろうと思う。しかし事実はほぼ明らかにされる。
(そもそも就いた職業がすごい)
笑ったり泣いたりしながら辿りつく、最後の真実。
修道院の行為を赦せるかどうかという最終問題に発展するが、
ここでフィロミナが意外な判断を下す。少女時代からどれだけ
苦しめられ、苛められ、子供まで取り上げられた彼女の口から
こんな言葉が出てくるとは…。そう思わされるラストである。
どうしてそんな境地に?と私も思ったが、いや、フィロミナは
最初からずっとその姿勢を守っていた。彼女は誰をも恨まない。
そんな母親を息子がどんなに想っていたか、そしてその息子が
今、母親に抱きしめてもらえる場所にずっといるのが感慨深い。
(こんなに哀しくて切なくて幸せな話だったとは…信じられない)
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