「母性の喪失に加えて父性の無責任さを見る映画。」子宮に沈める Jaxさんの映画レビュー(感想・評価)
母性の喪失に加えて父性の無責任さを見る映画。
ドキュメンタリーのようなカメラワーク。幼い長女の在り方が演技とは思えないほど。胸に詰まる。
何日も置き去りにされ、食事も与えられず、部屋を虫がはいずり、排泄すらままならず、それでも子供は母親に捨てられたなど思わない。それは子供が純粋であるというより、母親が絶対的な存在であるからだ。子供にとって親から見捨てられることは文字通り心身の「死」を意味する。親子には明確な権力関係があるのだが、それに無自覚な親は多い。
映画を見て、酷い母親だとなじるのはもっともだが、どうしようもない父親不在感に気づくだろうか。
この映画のモデルとなった母親は、自分の浮気が原因で夫と別れたものの、離婚に際して夫や義理の両親に対して「養育費を求めないこと」「義実家の助けを求めないこと」などを誓約させられていたらしい。それは一見元妻への懲罰に見えるが、実際には子供への虐待である。どんな子供でも両親から養育費を受けとる権利があるからだ。日本では離婚した父親の2割しか子どもの養育費を払っていないという。これは間接的な養育放棄、虐待である。
どんなに親がクズでも子供は守られるべきだからだ。母親の責を子供が負うようなことがあってはならない。
本編でも、母親がクズでも父親がまともなら子供は救われていたかもしれないのに。
正にその通りです。この映画では、父親をほとんど無視して描いています。真実がどうであったかは僕は理解していませんが、問題の起点が父親にあると僕も思いました。映画はそれを擁護してはいませんが、意識的に避けているように僕は思えました。
それに意図する所があるのかないのかが僕は良くとらえたので、満点を付けました。
『誰も知らない』って映画を見て、この映画を見たのですが、有名監督の影に隠れて、こんな凄い映画が存在していた事に僕は驚きました。
それこそ『誰も知らない』だと思います。
フォローさせていただきます。