「かえりなさい、産まれる前に」子宮に沈める からあげクンさんの映画レビュー(感想・評価)
かえりなさい、産まれる前に
実際の事件をモデルにした映画。
母が子への興味を失っていき、やがて育児放棄をしてしまう。
胸糞悪いけど、一度は観てもらいたい映画。
若く優しい母と、乳幼児の姉弟。
3人は幸せに暮らしていたが、父との離婚、母の就職を機に生活が一変する。
母の身なりがハデになり、部屋は次第に荒れ、若い男を家に連れ込むように。
母が構ってくれなくなって寂しいのか、お姉ちゃんが家族で海に行く絵を描くシーンは胸が痛くなってしまった
ある日突然、母親は出かけたまま帰ってこなくなる。
扉や窓にはガムテープが貼られ、幼い姉弟はリビングに閉じ込められてしまう。
僅かな食料で食いつなぐも、弟は餓死。
弟の死を理解できない姉は弟のために紙粘土でバースデーケーキを作る。
姉は水道水や生米、生ごみを口にしながら、変色しウジ虫がわいた死体と同じ部屋で暮らす。
何日か経った後、突然母が帰宅してくる。
寂しかったと母に抱きつく姉。
母は弟の死を確認すると姉を風呂場で溺死させる。
部屋を掃除し編みかけのマフラーを発見する。かぎ針を抜き取り、産道へ挿入する。
幸せに暮らしていた頃、子供たちのために編んでいたマフラーだ。
マフラーは息絶えた姉弟の首に巻かれ、かぎ針に通されたままの赤い毛糸は母の子宮へと繋がっている。
子供がお腹の中にいる時に戻れたらどんなに良いだろう。
もっと子供に愛情を注げたかもしれないし、夜の仕事なんて始めなかったかもしれない。夫ともっと上手くやれたかもしれない。そもそも、子供なんて産まなかったのかもしれない。
もう一度、子宮へ沈めたい。
孤独が母を追い詰める。
ポスターに書かれたキャッチコピーだ。
母は誰かに愛されることを渇望し、子供に愛情を注ぐことを辞めた。
自分を見てくれる存在が居なければ、社会において自分の存在意義を感じることは難しいのと同じように、母は男に抱かれる事でしか自己の存在を肯定できなかったのかもしれない。
「誰かに認められたい」という人間らしい欲求が、虐待やネグレクトという非人道的な行為へと走らせる。
映画の序盤や中盤は、子供はよく分からないタイミングで泣くし、言うことを聞いてくれない。そういう育児のリアルさが撮れていたのではないかと思う。
子供が酷い目に遭うのを観るのは辛く、胸が痛い…
でも、この映画でそう感じたからこそ、自分の子供は幸せにしてあげたいと強く思った。
>lady様
ありがとうございます。
同じ感性をもっている方がいてとても嬉しいです。
この映画から、そして元となった事件から読み取ったその本質をずっと心に留めておきたいですね。