「16年26本目はずっと観たかった社会派フィクション。」子宮に沈める Aさんの映画レビュー(感想・評価)
16年26本目はずっと観たかった社会派フィクション。
16年26本目はずっと観たかった社会派フィクション。
家庭という密室で孤独感を感じ精神的に追い詰められた母親は愛する無垢な子供たちすらをも追い詰めてしまう。
精神的にパンクしてしまった母親は新たな世界を求めて家庭を脱し、母から女になり戻らなくなるのだが、取り残された子供たちはその密室でどう過ごしているのか?をまじまじと直視させられる。そんなもの見せつけられなくても少し考えれば分かることなんだけど、分からない親が少なからず存在するから、いまも悲惨で悲しいニュースは根絶されていない。。。
カメラワークはほぼ低く、ワンカットがとて積もなく長く、心理描写も殆ど見られないから、ぱっと見よくわからない描写も多い(想像しなければならない)(画面内に収まりきれてなかったりね)のだけどそれはたぶん子供たちの心情。子供たちはまだ小さく弟くんは赤ん坊くらいだから、大人の世界なんて知らないしわからない。
どうしてお母さんは帰ってこないんだろう?疑うことも知らずただただ無垢な心で大好きなお母さんを待ち続ける。
待ち続け待ち続け、やっとお母さんが帰って来たと思ったら。。。
映画として面白いかどうかは別の話になるかも知れないが、モキュメンタリー?としては非常に面白い作品だった。
子供たちの演技が本当に上手で撮影風景が非常に気になる。気になるのは撮影風景だけで、元ネタとなった実在する育児放棄事件の風景は想像したくもない。映画として創られたものなんかよりもずっと想像を絶する世界なんだろうと考えると、泣きたくなる。やるせない。ニュースで観たって悔しくなるが、映画として、動画として観ることでより一層心に迫ってきて握り潰されそうだ。
わたしは一般的な理想の家庭のかたちに産まれたわけではないかも知れないけれど、それでも愛する家族、そして愛してくれる家族に恵まれたから、ここまで生きて来れた。いつだって心にそれを留めているけれど、これを観て再認識。
わたしもきっと母のような母に成りたいと思うし、本作に登場する母には同情も軽蔑もする。複雑な気持ち。
どうしたらこのような悲惨な状況を逃れられるの?本作母はどうしたら良かったの?色々逃げ道はあったはずなのに、逃げられない状況でもあったのだとしたら、どうすることも思い浮かばなくて、とても歯痒くて悲しい気持ちになった。
鑑賞後の絶望感、カタルシスが凄い。
皆観て!お勧めだよ!と勧められる作品ではないかも知れないけれど、わたしは母親になる前にこの作品を観ることが出来て良かったと思う。
邦画には疎いので知らなかったんだけど、監督と脚本の緒方貴臣氏はほかにも気になる映画を撮っているみたい。【終わらない青】【体温】あたり気になる。これを機に邦画嫌いを克服できないかな(笑)。