大統領の執事の涙のレビュー・感想・評価
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歴代大統領を演じる顔ぶれが楽しい → まだまだ白人映画
冒頭、セシルの母親がどこかで見たことある顔だと思ったらマライヤ・キャリーだった。
セシルが仕えた7人の大統領のうち5人が登場するが、この顔ぶれがまた楽しい。皆、雰囲気がよく似ている。
時代の背景は、黒人差別を柱に置き、キューバ危機、ケネディ大統領暗殺、ベトナム戦争、キング牧師事件といった激動のアメリカを描いていく。こうした歴史の節目をホワイトハウスで目にするだけでなく、家庭を持ったセシルが大きな流れの渦に家族が巻き込まれていく苦悩を描くことで、話に厚みが出た。
自分の仕事に誇りを持ち、黒人として人として尊厳を持った上で白人に忠実に仕えてきたセシル。その信念の糸がプツンと切れてしまったとしたら、セシルの心は閉ざされるのだろうか、それとも開放されるのだろうか。邦題にある“涙”の意味はここにある。一途さと挫折を味わうセシルに、抑えた演技のフォレスト・ウィテカーがよく似合う。
ただ、実話がベースだと曲げられない部分があるので、どうしても話が単調だ。
そんななか、堂々とシドニー・ポワチエを白人に媚びた役者だとけなす場面は、そこまで言うかという驚きと同時になるほどと腑に落ちる笑いがこぼれる。
もっとも、白人大統領を辛辣に描いてこそ、この作品の価値が出るのであり、そうしてみるとリー・ダニエルズ監督もまだまだ真価を発揮しきれていない。これが企画を通せるギリギリの線だったのかもしれない。まだまだ差別は存在する。
黒人差別の歴史
アメリカの汚点
アメリカの黒人差別の歴史は、やはり汚点でしかない。そのことをはっきりと認識させられた。
差別はどこの国にもあることであるが、ほんとはあってはならない。人間は、いつそのことに、本当の意味で気づくのだろうか。
人は絶えず他者と自分を比べ、優劣をつけたがる。そのこと自体はもう避けられない。だからといって排斥していいものではない。
大統領の執事となったセシル(フォレスト・ウィテカー)の一家は、期せずしてアメリカという国家と斬り結んだことになる。
リー・ダニエルズ監督の演出は丁寧で、それでいてテンポのいい展開に引き込まれていった。
バラク・オバマが大統領になって、セシルは、ひょっとしたら安心したかもしれない。
だが、アメリカはそう簡単には変わらない部分もある。
等身大の瞳から観る"本当のアメリカ"
7人の大統領に使えた黒人執事、セシル・ゲインズ(フォレスト・ウィテカー)の実話を描いたストーリー。
「すぐ目の前で世界が動いていた」というキャッチフレーズの通り、彼は世界の中心であるホワイトハウスに仕えていた。しかし、ホワイトハウスに"本当のアメリカ"など存在しない。
セシルが本当にみつめていたものは、"黒人としての定め"を受け入れた自分自身の人生だった。黒人に生まれ、「ハウス・ニガー」として生きてきたセシル。父親を殺され、首をくくる黒人を見つめ、ホワイトハウスの執事として誇りをもちながら、革命運動をするわが子を勘当する。この物語には彼にしか見えない"本当のアメリカ"が描かれているのだ。
物語は、中盤からセシルの子供・ルイスにもフォーカスを当てている。大学で革命運動を始めたルイスと、ホワイトハウスに仕える父・セシル。二人は同じアメリカに暮らしながら、全く別の道を歩んでいくのだ。さまざまな想いが渦巻くアメリカの現状を、この物語は見事に書き出している。
話の中で、この映画を象徴する台詞がある。それは、セシルの妻・グロリアの台詞だ。セシルから告げられたケネディ大統領が暗殺事件を受け、彼女は一言、「そんなこと、知ったこっちゃない」と吐き捨てる。夫と子供が互いの道を進んでしまったせいで、崩壊しかけた家族を見つめていた彼女の叫びだった。家でひとり、家族を見守っていた彼女にとっては、大統領が殺されようが、差別問題に革命を起こそうがそんなことは「知ったこっちゃない」のだ。ただ、ばらばらになってしまう家族をどうにか食い止めたかったに違いない。
彼らの家族が国の崩壊を象徴しているようであった。
黒人差別問題、ケネディ大統領の暗殺、KKK、そしてオバマ大統領の就任。アメリカが大きく動いていた時代を、等身大の彼の目を通して見事に描ききった映画史に残る傑作である。
執事は見た!
主人公とその長男の確執とやがての和解をとおして公民権運動の歴史を長男の活動側と主人公の権力側とを平行して描いてゆく。
混乱する国内をまとめようとするアイゼンハワー。
理想に目覚め実行しようとする前に凶弾に倒れるケネディ。
四六時中仕事をしているジョンソン。
リアリスティクな考えと行動をしながら最後には去るニクソン。
レーガンとの親交。
それは白人の黒人観が変わってゆく歴史でもある。そして主人公が執事の仕事を辞めるときにレーガンと交わした会話がこの作品の主題だろう。
フォレスト・ウィテカーの演技が良い。若い頃と老境に入り始めた頃の給仕の動きの違いとかの細やかな演技が教科書のように成りがちな作品に深みを与えている。
親子 家族の物語
アメリカ大統領に仕えた執事の物語というので 大統領と執事の話と思っていましたが、黒人の人種差別そして 親子の話でした。
私も子どもがいるので 親子関係にとても 共感しました。
親の思いと裏腹に 子どもはたとえ 自分が滅びようと 自ら
戦いを挑んていく姿を見て
やはり 子どもはこども 親にはどうすることもできない・・・
ということを 痛切に感じる作品でした。
大統領の執事として 黒人としては いい仕事についたのですが
仕事が忙しく 妻にはさびしい思いをさせたり 前出にも書きましたが 子どもは黒人の弾圧に立ち向かい何度も 刑務所に入り
大変な目に合ってしまい
黒人問題を描きながらも 誰にも通じる 家族の物語も描いていました。
黒人の悲しい歴史をも 描いているのですが
私は 親子のかかわりを 考えさせられる映画でした。
差別と対立と和解。
これを観ておいて良かった、と素直に感じられる佳作。
いわゆるアメリカの暗部である負の歴史を、大仰に語らずに
訥々と説明してくれるような作品である。
人種差別や公民権運動に関する作品は数多く公開されるが、
まさに歴史の立役者のすぐ傍にいた存在でありながら、
空気のように生きた人物が、静かに戦いを挑む姿が印象的。
F・ウィテカーは実在のセシルになりきり、見事に演じている。
で、夫が夫なら妻の方もかなり印象的。
何かというと名前が出てくるアチラでは大人気の司会者、
O・ウィンフリー。映画で観るのは久々な気がするんだけど、
さすがの大貫録。夫と息子の対立の間で苦しむ妻を演じきる。
綿花畑で働く息子から、ハウスニガー、ホテルのボーイを経て
大統領の執事に大抜擢されたセシル。生い立ちだけでも凄い
物語なのだが、なぜ彼がそういう職を得ることが出来たのかは
彼の存在感とその仕事ぶりに伺える。幼い頃はそんな父を自慢
できた息子も、公民権運動に身を投じるようになってから恥じて、
やがて家庭内は不穏な雰囲気に包まれる。生きていくためには
職を失う訳にはいかない。父には父の、息子には息子の葛藤が
あるのだが、それを見守る母親の苦悩も並大抵ではない。
もうひとりの息子を戦争で失い、やがてボロボロになっていく
この一家の再生に向けて、セシルはどんな風に生きていくのか。
彼が執事に上り詰めるまでの一幕と、公民権運動に揺れるニ幕、
といった二部構成で、時代の流れが非常に分かり易い。
冒頭から中盤まではコミカルなシーンも多く、彼らが(白人の元で)
豊かに暮らしていた様子が分かり、人権問題が中心になる後半は、
父の静と息子の動が対立し、別の立場からの戦いとして描かれる。
そしてそんな時代に絡む大統領役に名俳優たちがズラリと並ぶ。
彼らのなりきり振りとその時代背景に笑って泣けてとても楽しめる。
セシルが黒人収容所跡地で呟いた台詞が特に印象的。
「この国はいつもそうだ。よその国のことはあれやこれやと言うのに。」
(やはり最愛なるものは家族。仕事も運動も全てはその為なのだから)
民主党キャンペーン映画?
理不尽な人種差別が当たり前だったころから、初の黒人大統領が誕生するまでを生きた大統領の執事の話です。 ホワイトハウスの裏側の様子も垣間見れますが、ストーリーは公民権運動を中心に描かれていて、そんな特別感はなく少し物足りなかったです。民主党のケネディ大統領に関してはスキャンダルなエピソードには全く触れず、誰からも好かれてとても素晴らしい人と表現されてて、共和党だったニクソン大統領がやりすぎというくらい悪者として描かれていましたし、最後の流れも民主党支持の大統領キャンペーン映画という感じがしました。
教材にしても良いほど…
執事の仕事を中心にして欲しかった。
映画「リンカーン」が始まりであり歴史の表面だとすると、本作は過程/一つの終着点であり裏面でした。
話自体は地味ですが面白かったです。
ホワイトハウスの執事としての側面、家族の長としての側面、
様々な側面が交互に/同時に描かれるため、流れる時代が多角的に観ることが出来ます。
ホワイトハウスの執事としての側面。
黒人執事が30年前からいた、という事実を今回初めて知りました。
セシルが接する歴代大統領は重大な決断を下す際の苦悩を見せつつ、一方で一般人と同じような悩みも抱えている。
大統領ですら同じ人間だということに、今更ながら気づきました。
またホワイトハウス内ですら残る差別意識。
当該意識とセシルの長き闘いも注目点でした。
そして家族の長の側面。
本作では妻、長男、次男が登場しますが、彼らはセシルの人間的な面を代理で表現する存在と言えます。
長年連れ添う妻は彼が表面には出さない悲しみ、苦しみを代わりに表わす。
長男は黒人に対する世間の評判に怒り直接的な行動で闘う、セシルとは異なる闘い方をしている存在を表す。
次男はセシルと同じ方向を見ているものの、異なる方法で闘う存在を表す。
全編通して描かれるのは差別意識に対して闘う黒人の姿。
そして闘いと共に変わりゆく社会。
セシル家族の面々は黒人の闘う姿を或る程度網羅的に見せる存在と言えます。
本作については映画「リンカーン」を併せて観ることで、より面白さが増すと思います。
描かれる側面の構図が似ていますし、映画「リンカーン」が始まりであり歴史の表面だとすると本作は過程/一つの終着点であり裏面でした。
あと、奴隷制度の現実も前知識として持っておくと、より感情移入出来ると思います。
最近の作品であれば「ジャンゴ 繋がれざる者」。
旧作であれば「マンディンゴ」や「ヤコペッティの残酷大陸」。
話や映像は地味ですが彼等が闘う、闘い続ける姿にはグッときます。
オススメです。
アメリカ合衆国という国
感動。アメリカの公民権運動の歴史
ユージン・アレンと言う8代の大統領に使えた実在の執事の人生を元に描いた、1950年代から1980年代のアメリカの戦後史。
物語の始まりは、1920年代のアメリカ南部から始まるのですが、まだまだ黒人差別が有る時代が描かれています。ネタバレになってしまいますが、いきなり、セシルの父が撃たれてしまうシーンは、当時のアメリカ南部を象徴しています。でも、それが普通であったという事も驚きですが。そういう意味では、歴史を描いているので、実際の出来事も劇中でたくさん描かれていますし、今では差別用語とみなされ、使われなくなった『ニグロ』と言う言葉が、作品中で普通に使われています。(今では、アフリカン・アメリカン/アフリカ系アメリカ人と言わないとダメ。)
歴史を描いているし、歴代大統領に使えた執事を描いているので、歴代大統領が画面に登場するんですが、これが・・・似ていない(苦笑)。まぁ、セシルが主人公なので、脇役はどうもでいいのかもしれませんが、ちょっと気になりましたね。それと、日本的には非常に注目される人物のキャロライン・ケネディですが、幼少のキャロライン・ケネディも劇中少しだけ出てきています。
いやぁ、日本人には判りにくいかもしれない人種差別の問題を、上手く描いていますね。非常に判りやすいです。「白人用」「有色人種用」とくっきりと様々なものが分けられているのを見るのは衝撃的です。それが、戦後も続き、つい先ごろまで継続されていた(あるいは、未だに継続されているのかもしれませんが)のですからねぇ。
いやぁ、中々感動的。非常に深い内容です。
人種差別に家族の絆を交えた感動の一品。
移り行く時代の証人なのか
こんな人がホワイトハウスにいたのか。
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