「映画「リンカーン」が始まりであり歴史の表面だとすると、本作は過程/一つの終着点であり裏面でした。」大統領の執事の涙 Opportunity Costさんの映画レビュー(感想・評価)
映画「リンカーン」が始まりであり歴史の表面だとすると、本作は過程/一つの終着点であり裏面でした。
話自体は地味ですが面白かったです。
ホワイトハウスの執事としての側面、家族の長としての側面、
様々な側面が交互に/同時に描かれるため、流れる時代が多角的に観ることが出来ます。
ホワイトハウスの執事としての側面。
黒人執事が30年前からいた、という事実を今回初めて知りました。
セシルが接する歴代大統領は重大な決断を下す際の苦悩を見せつつ、一方で一般人と同じような悩みも抱えている。
大統領ですら同じ人間だということに、今更ながら気づきました。
またホワイトハウス内ですら残る差別意識。
当該意識とセシルの長き闘いも注目点でした。
そして家族の長の側面。
本作では妻、長男、次男が登場しますが、彼らはセシルの人間的な面を代理で表現する存在と言えます。
長年連れ添う妻は彼が表面には出さない悲しみ、苦しみを代わりに表わす。
長男は黒人に対する世間の評判に怒り直接的な行動で闘う、セシルとは異なる闘い方をしている存在を表す。
次男はセシルと同じ方向を見ているものの、異なる方法で闘う存在を表す。
全編通して描かれるのは差別意識に対して闘う黒人の姿。
そして闘いと共に変わりゆく社会。
セシル家族の面々は黒人の闘う姿を或る程度網羅的に見せる存在と言えます。
本作については映画「リンカーン」を併せて観ることで、より面白さが増すと思います。
描かれる側面の構図が似ていますし、映画「リンカーン」が始まりであり歴史の表面だとすると本作は過程/一つの終着点であり裏面でした。
あと、奴隷制度の現実も前知識として持っておくと、より感情移入出来ると思います。
最近の作品であれば「ジャンゴ 繋がれざる者」。
旧作であれば「マンディンゴ」や「ヤコペッティの残酷大陸」。
話や映像は地味ですが彼等が闘う、闘い続ける姿にはグッときます。
オススメです。