「アメリカの歴史を、一人の国民としての目線から捉えた良作」大統領の執事の涙 根岸 圭一さんの映画レビュー(感想・評価)
アメリカの歴史を、一人の国民としての目線から捉えた良作
温かく重みのある良い映画だった。
作中でも描かれていたように、当時ベトナム戦争はアメリカの参戦の意義が問われていた。個人的な意見としては、ベトナム戦争によって南ベトナムが敗北すれば、ソ連や中国といった共産主義勢力の拡張を許すことにつながり、結局アメリカをさらなる危険に陥れることにつながる。アメリカの安全を守るためにも、むしろ積極的にベトナム戦争に関与して先手を打つ決断を政府が下したのは正しかったように思う。しかし、所詮それは他人事だから言えるのであって、セシルも息子が戦争に送られるのは許せない気持ちでいっぱいだっただろう。
また、公民権運動に関しても、この運動が黒人の社会的地位向上や公民権法、投票権法といった法律の成立に大きな役割を果たしているので、大変な意義のある運動だった。しかし、我慢を重ねて自分の身を守ってきた父親からしてみれば、息子が学業を放置して、逮捕されたり命の危険にもつながったりする運動に身を投じているのは、やはり許せなかっただろう。
このように、立場が変われば言うことも変わる。今作は、20世紀アメリカの激動期を、一人の国民として、そして一人の父親としての目線から捉えた良作。また、農園での底辺労働者という立場から、ホワイトハウスの執事にまで立身出世したサクセスストーリーでもあった。
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