「ゲームオーバー(遊びはおしまい)」エンダーのゲーム 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
ゲームオーバー(遊びはおしまい)
『ガンダム』や『エヴァンゲリオン』の世界観にも影響を与えた
SF小説の映画化……とのことだが、アニメ関連にイマイチ疎い
自分としては、実力派子役とベテラン勢の入り交じるSF大作
として楽しみにしていた作品。
* * *
さて、『衝撃のラスト』と宣伝されていた本作。
SF戦争映画にも関わらず、宇宙人とのハデな戦闘はなく
演習シーンばかりだったが、僕は
①実は敵は宇宙人ではなく同じ人間だった
②実は主人公が現実だと思っていた空間もゲーム空間だった
③実は主人公はゲームと称して本当の戦争をさせられていた
④実はH・フォードは海老天好きの人造人間だった
といったイヤなオチを何パターンか予想してたせいか、
「もしかしてこのシーンは……」みたいなイヤな緊張感を
ずっと感じながら鑑賞していた。
オチ予想の一部は当たったが……
『皆殺しにした相手は、本当は対話を望んでいた』
という心底恐ろしい展開までは予想できず。
ぬうー、しんどい、こりゃしんどいよ。子どもになんつう事を
させたんすかハリソン&キングスレーじいさま。
* * *
イラク戦争の兵士、ムスリムの自爆テロ犯なんてのも
若者が多いと伝え聞く。『永遠の0』が記憶に新しい
特攻隊員も、やはり年端もいかない若者が多かったとか。
子どもはスポンジのように柔軟に知識を吸収する。
同時に、他人の痛みに対してまだ鈍感だ。
子どもに銃と環境を与えれば、学習は早く、相手を殺す理由に
疑問を抱かず、引き金を絞ることに躊躇しない優秀な兵士に
なり得る。
だが子どもは成長するにつれ、他人が自分と同じ痛みを
感じる事を、他人と痛みを共有する事を理解するものだ。
その過程の真っ只中に殺し合いへ放り込まれた子どもは、
自分の行為の残虐さにやがて気付いた時に、
一体どれほどの恐怖と後悔を抱くものなのだろう?
* * *
言うまでもなく、一番残虐なのはそんな彼らを利用する
大人たちだ。子どもを戦争に利用するやり方は
合理的・効率的であり、と同時に極めて非人間的。
この映画のH・フォードやB・キングスレーからも、
主人公への親愛の情のようなものは感じられない。
いかに彼を強力な『駒』に育成しようかという打算ばかりだ。
主人公やその他の子ども達が負うだろう心の傷も、
彼らには大きな目的の為の小さな犠牲に過ぎない。
戦争の指導者なんてどれもこれもそんなものなのだろうが、
彼らの思考こそが最もゲーム的だと感じる。
* * *
映画の原作は1977年初版だそうな。
70年代はコンピューターゲームの黎明期ではあるが、著者は
バーチャルリアリティで麻痺するモラル感覚みたいなものを
こんな頃から危惧していたんだろうか?
原作未読なので、どこまで原作通りなのかは知らないケド。
内容も面白いが、期待した通りキャスト陣も魅力的だった。
A・バターフィールドやA・ブレズリンを始め、
子役の演技は堅実……というか、チョイ役を含めても残らず
上手いし、ベテラン勢もバリバリの存在感で前述のような
エゲツナイ役を演じている。
* * *
ただ、少子化政策の中でエンダーが生まれた経緯や、エンダーと
凶暴な兄の確執とかはもうちょい掘り下げてほしかったかなあ。
その他サブキャラ達の描写がやや薄めなのも気になった点。
短い描写でそつなく説明されているとは思うのだけど。
また、SFチックなデザインの数々から古臭さは感じないが、
真新しさがあるとも言えない所が難と言えば難かなあ。
デザインにあともう一歩インパクトが欲しかったか。
* * *
そんな細かい不満はありつつも、
世界を全部しょいこんだような眼をしたエンダーの行く末に
固唾を呑み、一喜一憂しながら見守り続けた2時間。
微かな希望も残すラストも含め、ヒジョーに楽しめました。
これ、続編あるのかしら? あるなら是非とも観てみたい。
〈2013.01.27鑑賞〉
浮遊きびなごさん
こんにちは。
私も初日に見ちゃいました。
このような考えもあるんですね。
だから、他の人のレビューは面白い。
私も衝撃のラストに痺れたタイプで
暫くは余韻に浸ってました。
冷静にみると、色々な視点がありますね。
コミュニケーションを無視する戦争の悲劇を
伝えるのか、子供を道具とする非常さを
テーマとするか、ウーン、寝れなくなりそう。
CGや、単純なエンターテイメントを楽しんだ
私としては反省しきりです。
続編有れば楽しみですね。
興行的には悪くは無かったので可能性大です。
次回はエイリアンと交流してほしいです。
一緒に第三の敵と戦ったりして。
良い作品と出会った後は
妄想は尽きません(笑)