フォックスキャッチャーのレビュー・感想・評価
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Amazing approach
男ハァハァ サスペンス
ジワジワ分かる人間像
圧倒的描写、圧倒的演技、圧倒的切なさ
鑑賞後、しばらく立ち上がれねくなるほどの圧倒的筆力。積み重ねあげられる伏線、静かに、だが確実に、丁寧すぎるほど丁寧に、積み上げられていくデュポンの静かな絶望。決して超えることはできない存在へのどうしようもない憧憬と背反する憎悪。兄が放つ光が眩しすぎる弟。全てを手に入れながら何一つ手に入れていない裸の王様。認められたい。何かを成し遂げた証が欲しい。焦りばかりが募っていく。なぜ、俺には誰もいないのか。絶望が折重なり、臨界点を迎えた時、文字通りトリガーが引かれる。緻密な描写を重ねた先に得られる圧倒的なリアリティ。超人としての、父親としての兄を殺したのは他でもない自分の分身だった。俺があいつで、あいつが俺で。
目が疲れた
演出家のチカラがすべて。
裸の王様
金で買うことの出来るものなら手に入らないものは何一つない。アメリカの財閥の御曹司ジョン・デュポン。彼が欲しがったのは金では買うことの出来ない名誉、敬意というものだった。
経済力を使ってレスリングチームの「コーチ」の座を手に入れるのだが、しょせんは金にものを言わせたパトロン。
映画はデュポンの虚栄心や孤独、そしてデュポン家の人間にふさわしい名誉をなんとか獲得しなければならないという焦燥感を丹念に描いている。そしてそのような人間の怖さを知るマークと、そのような人間に全く善意の無頓着さを表すデイブの対比も鮮やかに映し出す。
主演のスティーブ・カレルが、コメディ俳優出身とは思えない陰鬱な人間像を演じている。座面に背中を接するほど深くソファに沈み、常に遠く見つめるようなくすんだ瞳。カメラは執拗に彼を正面からとらえる。まるで尊大な人物が自らの意志でカメラを自分のほうへ向けようとするように。
マークを演じるチャニング・テイタムには、あえて顔に陰翳が生じるような角度からの撮影が多くデュポンと兄デイブの間で揺れていることを観客に感じさせる。
そして、デイブは努力と才能によって成功を収めた人間に特有の無頓着さを表している。マークとは対照的に、マーク・ラファロの髭面は何の陰もなく撮影されている。その瞳は明るいが思慮に乏しく単純で明快なものである。
デュポン本人も周囲も、デュポンがそのチームのリーダーで若い選手たちの敬意を集めているという演出に勤しむ。しかしそんな彼の名誉欲はレスリング選手たちには理解されない。なぜなら、彼ら選手が名誉に浴するのは、試合に勝利した時であり、手に入れることは困難ではあるがその名誉の理由が単純明快だからだ。
結局、最後までデュポンは選手たちからの敬意を得ることはない。
彼のその欲望を理解できなかった者は、裸の王様が裸であることを、王様自身に痛切に思い知らせていることに無自覚だ。その無自覚がときに悲劇を招くことになるのだが。
ゾッとした
何の情報も入れずに見に行ったら、スポーツドキュメント的な映画みたいな内容なのに、サスペンス調も重々しいトーンで、何の映画か本当に分からなかった。物語のポイントも示されないままで、それが次第にマークはコミュ障で、デュポンは悲しい空っぽの子供おじさんという輪郭が見えて来てから、なんていうか結末のとんでもない展開まで、悲しくて切ない恐ろしい映画だった。
デュポンは童貞じゃないかと思った。お母さん以外唯一触れる女性が、デイヴの奥さんで滅茶苦茶愛想が悪い。金で全てを手に入れようとするけど何も手に入らない、特にソウル五輪でマークをタオルで扇ぐ様子が悲しすぎる。お金で一応あそこにいられる事がすごい。
デュポンがなぜデイヴを殺したのか、露骨に自分を嫌悪するマークの方が殺されそうなものなのだが、実際彼を苛んでいたのはデイヴだったのだろう。メダリストであるというだけでなく人柄がよくて、家族を愛している、メダリスト以外の普通の部分こそがデュポンにとって最も欲しくて一生手に入れられないもので、自分に対しても敬意を払って普通に接してくれるところに耐えられなかったのだろう。
デュポンが岡田斗司夫さんに見えてしかたがなかった。岡田さんを苦しめるのは罵声や嘲笑ではなく、普通に成熟した人の普通の幸福なのかもしれない。
フェイム
金と名声はあるが心は‥という題材は使い古されたものだけど、この作品は不穏かつ重い雰囲気で描かれていてBGMの無い絵作りと少ないセリフという構成なのが良かったと思う。実話に基づきながらほとんど何も語られていないので「意味がわからない」と言われたらそれまで。少し考えればテーマは見出せるとは思うけれど。
3人の演技を引き出したのも上手い。ベネット・ミラーは信用できるなと思う。
"FAME"を使ったのは『プリティウーマン』との関連性を匂わせていたのだろう。つまりはそういうこと。こっちは悲劇だけども。
チャニングは今まで注目してなかったが今後期待できるかなと思った。顔が綺麗すぎて逆に苦労するパターンかもだけどこれを演れるんだから。スティーブは以前から知っていたしこれくらいはやるだろうと。ヘリの中でコカインやりながらスピーチの練習をするところとか祝勝会での悪ふざけとかは彼らしいなと。元より彼の笑いは怖さをたたえている。一番の驚きはマークで、体づくりや髪を抜くこだわりで別人になっていた。技巧派のレスリング選手という設定を納得させる佇まいだった。
しかし男一人で観ると勘違いされそうな作品ではある。かといってカップルで観るのも違うよな。
想像力を刺激される傑作
冒頭、C・テイタム演じるマークの現状を、説明台詞なしで淡々と描写するシークエンスで既に傑作の予感がビンビン。『マジック・マイク』では何も思わなかった彼の伏し目がちで精神的に脆そうな佇まいに一瞬で心奪われる。デカい図体に似合わない繊細な演技に脱帽した。長いカットで描かれる兄弟の組手?に代表されるレスリングシーンも緊張感に満ち満ちている。
S・カレルが怪演する御曹司の何を考えてるのかわからない不気味さは夢に出るレベル。M・ラファロの太陽のような優等生感も、その陰である弟の闇とのコントラストを為している。アカデミー助演男優賞取って欲しいなあ。
そして、コピーにもある「御曹司がメダリストを殺す」理由を散りばめられた諸々のシーンから推察する楽しさが尋常じゃない。観た後も評価が上がり続けるタイプの作品。これが実話という恐ろしさ…。
高みを目指し、結局誰一人として幸せになれず
滲み出る不穏感に惹き付けられる作品。
暗く地味な画面が淡々と。
刺激が無く退屈な時間となると思いきや。
滲み出る不穏感/狂気が徐々に色濃くなり。
惹き付けられる緊張感がありました。
話の軸となるマークとジョンの関係性。
そして兄デイヴ参入後の関係性。
各々が持つ“主/従”の傾向が不協和音を生む。
“従”であるマークを中心に“主”と“主”が対峙した際。
小さな摩擦が積み重なり保たれた均衡が大きく崩れる。
その関係性の変化、摩擦が生まれるまでの過程が丁寧に描かれており好感を持ちました。
また滲み出る不穏感を体現した役者陣も良かった。
深い闇を抱え闇を覗く者すら呑み込む怪物ジョンを。
コメディ印象の強いスティーブ・カレルが好演していました。
マーク演じるチャニング・テイタム、デイヴ演じるマーク・ラファロも良かったです。
滲み出る不穏感に惹き付けられる本作。
終盤の風呂敷の畳み方も簡潔で好印象。
決して派手な作品でないですが余韻も含めて静かに楽しめる作品だと思います。
オススメです。
マザコン
02/14公開の当該作品は、デュポン財閥の御曹司ジョン・デュポンが起こした
殺人事件を映画化したものです。
カンヌ国際映画祭・監督賞受賞、
ゴールデン・グローブ賞・3部門ノミネート、
アガデミー賞・5部門ノミネート
された話題作です。
そして、キャッチ・コピーは、
「なぜ大財閥の御曹司は、オリンピックの金メダリストを殺したのか?」
です。
大変期待していたのですが、まあまあの作品でした。
私も、マザコンでして、母親に褒められ認められる事が、
勉学の原動力でした。
しかしながら、主人公は、母親の最期まで、認められなかった為、
母親の死後は、どんな事をしても、National Teamの
レスリング・コーチとして、世間の人々から、尊敬され愛され
認められたかったのでは。。。
PS:
兄弟ものは、なぜ、兄はリッパで、弟はダメなのでしょうか?
4人兄弟の末っ子の私は、いつも疑問に思います。。。
Michi
財力以外に孤独を埋める術を知らない男の暴発
観終わって、これが実話であることに今も驚いている。ジョン デュポンは、大富豪の元に生まれ、金で全てを解決しようとするが、財では手に入られないものを見せつ けられた男。それは 純粋な兄弟愛。母の捻れた愛(偏愛)で育ち、何かが 欠落してしまい、結局孤独であり自分の世界から抜け出せないでいる男デュポン を、スティーヴ・カレルが上手く演じていた。
思いのほか退屈でした
今年度のアカデミー賞で、主演男優賞と助演男優賞など5部門にノミネートされていますが、ただ作品としてはどうでしょう? 一言で言えば退屈な作品でしたね。
異常な結末に向かってどんどん緊張感が高まっていくわけでもなく、淡々と話が続きます。もっとジョン・デュポンの異常さを描かないと、最後の結末に説得力が出てこない。ジョン・デュポンの心の奥底にもっと入り込む必要があったと思いますね。
主演男優賞にノミネートされているスティーブ・カレルの演技なかなか抑制が効いてよかっただけに残念です。
たんたんと精神崩壊。
ガチガチで息がつけないキツイ作品だが、物凄く面白い
なごみ、癒しのの要素ゼロ。ガチガチで息がつけないキツイ作品だが、物凄く面白い。ストーリーは実話に基づいているそうだ。いつでもどんな国でも、狂ったボンボンほど始末におえないヤツはいない。
ストーリーはシンプルで分かり易い。セリフよりも映像シーンで状況や心理を展開して行くが、流れや意図が掴めず戸惑ったりする作品ではない。試写会のオープニングトークで、静寂の中を映像で物語を語る手法について紹介していたが、確かにそういうシーンが印象的だった。
主人公は桁外れの大金持ちでマザコンのボンボン。愛国者気取りで、思い込みが強く、アメリカを象徴するような強いリーダーの強迫観念に取り憑かれている。
金と巨大な権力を使い、果たせなかった若い頃の夢の代償を追及するが、所詮はボンボンの壮大な我儘なので結実しない。強烈に憧れるリーダー像と、現実のショボい自分の姿のギャップに耐えかねて破滅へと向かう。
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