「ねじれた承認欲求」フォックスキャッチャー だいずさんの映画レビュー(感想・評価)
ねじれた承認欲求
見逃していたフォックスキャッチャーが、京都シネマ名画リレーでやるということで、寝不足と季節外れの風邪をおして見に行ってきました。上映から半年足らずなのに会員500円!の素敵企画なのです。
上映中、多少咳き込んでしまって周りの方には申し訳なく思っています……
さて、予告を見ていた限りでは、ガチムチおじさんの組んず解れつは食指が動きませんでしたが、抑えた演出での心理描写が秀逸との評を目にするにつれ、興味がわくも、時期すでに遅しだった本作。
寝不足と季節外れの風邪が、鑑賞を阻害するかと思いきや、言葉少なく写実的に見せる画面に釘付けとなり、眠気も忘れる2時間強でした。
チャニングテイタムは初めて見るのであれですが、スティーヴカレルとマークラファロが、彼らに見えないですね。中の人の個性がわかんない化けっぷり。
特に私はマークラファロがフェロモンを完全に抑えていてびっくりしました。
弟くんは弱いですね。デイヴに依存していることがどうしても心地いいのか、反抗してみるものの最後には擦りよってしまう。兄がそうなるように図らずも仕組んだとも言えるのかもですけれども。
ソウル五輪の選考会時の荒れっぷりがまぁすごい。5キロも一気に食って出せるもんかね?
レスリングの軽量は本当に素っ裸でやるんですね。あれ女子もなんでしょうか?
ジョンデュポンは母との間に何やら葛藤があるらしく、おそらくマークの中に自らを見ていたように思われます。
それだけではないようだけど。
馬への嫌悪、突飛な行動、マークと親密になったかと思えば(クスリ仲間て…やめてよ)突然ビンタして酷いことを言う。そのセリフはおそらくかつてジョン本人が母に言われたことではないかと思ったり。
ジョンの歪みは母に認められたいというものだと思います。しかし叶わないまま、母死にました。
ドキュメンタリーの撮影でデイヴは上手くジョンへの尊敬を演じられません。だって良いスポンサーで雇い主だけど、競技は素人レベルだし、マークを荒れされるし、尊敬なんて全くしていないわけで。でもビジネスとして苦々しい顔で尊敬を口にします。
出来上がったドキュメンタリーを見て、ジョンはデイヴを銃殺しに行ったようですが、ドキュメンタリー内で、デイヴの発言が入ってなかったのでしょうか?それとも映し出されたデイヴから自分への畏怖が見受けられなかったことに憤慨したのでしょうか?
いずれにしても理解できるはずもありませんが。
映画を観終わってから、いくつかの記事を読みますと、そこにはこの映画の出来事や描かれ方は、史実と違うことも多く、実際のマークシュルツさんから見たらいい迷惑だ、ということが書かれていました。
まぁ、事実をベースにしたフィクションですからね。そこは伝記としてではなく、フィクションとして受け止めたいと思います。