「圧倒的描写、圧倒的演技、圧倒的切なさ」フォックスキャッチャー 五本松さんの映画レビュー(感想・評価)
圧倒的描写、圧倒的演技、圧倒的切なさ
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鑑賞後、しばらく立ち上がれねくなるほどの圧倒的筆力。積み重ねあげられる伏線、静かに、だが確実に、丁寧すぎるほど丁寧に、積み上げられていくデュポンの静かな絶望。決して超えることはできない存在へのどうしようもない憧憬と背反する憎悪。兄が放つ光が眩しすぎる弟。全てを手に入れながら何一つ手に入れていない裸の王様。認められたい。何かを成し遂げた証が欲しい。焦りばかりが募っていく。なぜ、俺には誰もいないのか。絶望が折重なり、臨界点を迎えた時、文字通りトリガーが引かれる。緻密な描写を重ねた先に得られる圧倒的なリアリティ。超人としての、父親としての兄を殺したのは他でもない自分の分身だった。俺があいつで、あいつが俺で。
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