「40歳の童貞男の続編」フォックスキャッチャー 三遊亭大ピンチさんの映画レビュー(感想・評価)
40歳の童貞男の続編
「フォックスキャッチャー」見ました。最高でした。傑作との評価は聞いていたが、ここまで凄まじいとは思わなかったし、劇場で観なかったことを本当に後悔させる。
ストーリーに新鮮さは特になし。だって知ってますしね、結末等々は。ただそれは、長回しだったり、無音表現だったりといった演出でカバーできてる。言わば徹底した雰囲気作りがハマった。場面場面で笑えるやり取りがあったりするけど、それを許さない重い空気がある。非常に強かったです。
あとやっぱりこれが1番だと思うんですけど、スティーブカレルの演技が気持ち悪くて素晴らしいです。全部見てるわけじゃないけど、カレル史上屈指でしょう。気持ち悪さの象徴は特殊メイクを駆使した顔面蒼白と無表情だと思うけど、彼は常に顎を上げてモノを見てるんです。その時の彼の心情は正確には汲み取れないけど、恐らくは他社の事を理解しようと遠くを見るような目で顎を上げて、対象を見つめてるのだと感じました。なぜそう思ったかと言うと、彼自身、自分が変わり者だと少なからず理解してるんだなとおもったからです。例えば、スティーブカレルが警官と射撃場で射撃練習をしてると、ジョギングで通りかかったチームが「あんた最高だぜ!」バリの事を言うと、無反応無表情に顎を上げた不思議そうな目でジーッと見つめるんです。その次のシーンで道場に現れて「ちゃんと練習しなさい!」って場面はあるけど、真意はそうじゃないだろうなって思わせる辺りが本当に不穏だし、なによりゾクッと怖い。
話自体は全く違うけど、なんとなく「アメリカンスナイパー」を連想させる。全体のテンションは低いけどなんか息苦しく感じる作品の雰囲気は、映画館で体感したかったと後悔。プンプンです。
総じて傑作です。2015年に劇場で見ていたら、間違いなくベスト3には入ったであろう。