ブルージャスミンのレビュー・感想・評価
全28件中、21~28件目を表示
エコノミーセレブ。
K・ブランシェットがめでたくアカデミー主演女優賞を獲得した作品。
「欲望という名の電車」や「サンセット大通り」、酒に溺れるといえば
「ヴァージニアウルフなんか~」に通じるコワイ演技をしているのか
と思っていたんだけど、観てみたらいつも通りの達者な演技だった。
鬼気迫るというよりは、よくいる哀れな中年女、といった感じで、
まだ親近感を抱きやすい。ゴシップ記事などにも似たのがいそう。
彼女の精神面は、傍にいる人間がしっかり説明してくれている。
「機内で逢った人よ。自分の話をずっとしてるの。聞いていないのに」
「悪いのはハルよ。姉は可哀想なの。金銭感覚が弱い人だから」
このジャスミン、確かに精神的におかしいんだけど、
彼女が辿ってきた過去を見せられると、ありゃ~これじゃあな、と思う。
セレブ生活から一転、一文無しになって、夫は逮捕→自殺、そして…
後半で明かされるもう一つの事実が彼女を奈落の底へ突き落とす。
あれだけの生活をしていれば人間、誰だって簡単に元へは戻れない。
「どうしてファーストクラスなの?お金がないならエコノミーでしょ?」
ダメなんですよ…このおねいさんは。何も捨てられないし諦められない。
プライドを捨てるくらいなら死んだ方がマシ。っていうタイプだもん。
どうして姉妹でこんなに性格が違うの?と思ったら、お互いに孤児で、
同じ里親に育てられたというだけ。仲よさそうに見えたんですけどねぇ。
オトコを見る目がない(爆)ってのはある意味、共通しているのだけど、
どちらにしてもオトコがどうのというより、幸せの中身を把握できてない
ところが共通している。姉は臭い事実に蓋をして取り繕ってただけだし、
セレブな姉に負けじと違う世界に手を伸ばしては簡単に失敗する妹。
情けない男ナンバーワンに匹敵しそうな元夫のオーギーや今彼のアルが
姉に対して向ける視線はほぼ同じで、アンタ何様のつもりだ!が必至。
肉欲感が強く脂ギッシュなところは、ご本家の若きM・ブランドに匹敵
しそうなんだけど、人格破綻していたブランチと今回のジャスミンでは
言葉以外に絡みようがない感じ^^;なので、怖いイメージはどこにもない。
一番恐ろしかったのは後半、富豪P・サースガードと喧嘩別れする原因と
なった、オーギーのあの一言。そもそも逮捕の原因を作ったのが誰で、
転落人生を歩むことになった自業自得と、親族からの冷酷なメッセージ。
どんなにバカでも、どんなに貧乏でも、きちんと家族を愛する人間ならば、
ああいう過ちは犯さない。そもそも結婚して家族を作るのは虚飾じゃない。
責任を果たさない人間に課せられた罪が彼女の哀れを一層際立たせる。
(しかし人生まだまだ。まずは酒も見栄も男も断ち切って自立しましょう)
コメディではあるけど近年の彼の作品ではぐっとシリアスな作品になっている。ウディの私映画としての側面も
これってウディとしてはどこまでが狙いだったのか。ケイト・ブランシェットの演技は笑えるところで笑わせないリアリティがあり、その迫力が本のおかしみを食っているような印象。良いか悪いかではなく、この作品は基本的にケイトの作品となってしまった。それが出来るってのが凄いんだけどね。アンドリュー・ダイス・クレイやサリー・ホーキンス も良かったけど、彼女のあの演技を受けることで引き出されたものがあったのではないか。こういう作品を時々やっちゃうからダイアン・キートンからも擁護されるんでしょう。
さて、ジャスミンとジンジャーは2人とも里子として同じ里親に育てられた義理の姉妹という設定。血は繋がっていない2人だからこそのアングルがストーリーに深みをもたらしているのだけど、これってウディ自身のプライベートを考えるとザラツく設定だと思うし、またジャスミンの前夫ハルとの間にもやはり血の繋がらない息子がいるというのもそう。ジャスミンは血縁者のいない孤独な存在なのだ。それも彼女の人物造形の一つの要素だろう。そしてその息子に「あなたが必要なの」と訴えた返答が「二度と現れないでくれ」という拒絶だったのもウディの作品と考えるとザラツくわけ。誹謗中傷されているというわけではないけれど。
そしてとうとう明かされた、ジャスミンが全てを失った理由。それは夫の浮気がきっかけとなったのだが、その浮気相手は19歳ということでしかも「浮気ではなく本気」だと告げられて我を失い夫の悪事を通報‥‥というくだり。これもザラツきますね。
コメディだけどシニカルでせつないし怖くもある。ここにブラックさが加わるとコーエン作品になるんだろうが、やはりウディは重い方にはなかなか行こうとはしない。コーエンが重いかっていうとそうではないけれど。しかし年齢のこととか考えると凄い作家だなとあらためて思わせる今作でしたね。
ケイトの脇汗とか衝撃映像だよな‥
憂鬱なジャスミン
ケイトブランシェットはすごいなぁ…
ジャスミンのいかれっぷり、すごいね。パニクってるときのマスカラの落ちっぷりで、取り乱しぐあいがわかるのよ。そしてザナックスに依存し過ぎ!ウオッカにもご執心のご様子で、生きずらそうで、痛々しいすがた突き放して描いていて、笑った。
お洋服とスタイルはバツグンやった。キャメルのエルメス似合ってた。
妹の庶民感とのギャップ、肩に星のタトゥーに変な髪型と荒っぽい彼氏…上流階級から抜け出せないジャスミンには、耐え難く、みたいなところも、あーそらそうかもと、腑に落ちる感じがした。
ジャスミンをかばいたいわけではないけれど、かわいそうに、と揶揄含みで同情したい気持ちになった。
残念ながら妹とその男達にはジャスミン同様にげっそりした。自分はどちらかといえばジンジャーと同じ階級なのに。
荒っぽい彼氏がどうしても無理なのです。女の職場に来て泣きすがるとか、無理なのです。
ジンジャーとアリの復縁の下りに、ジンジャーへの批判的目線もあるなぁと感じた。
上流階級のいやらしさも庶民階級のいやらしさもどっちも描いていて、興味深くおもった。
歯医者に無駄に気に入られる所
笑ったなー。
ラストのオチがきまってなおよかった…
まじかーまじかー、そら夫の息子に恨まれるわー。ジャスミンたら破壊者ですやん!デストロイヤーですやん!
最後はもうマスカラの滲みでは表現できなんだか、脇汗びっしょりでヘロヘロになってる姿がいたいけで、これまた笑った!ああ、このあとどうなるんだか。
そこの救いも描かずいかれたまま放置ってゆうのがまた、皮肉が効いていて良いんだろうな。タイトルも、よいよね。憂鬱なジャスミンだってさ。
サンフランシスコとニューヨークがいつ切り替わったのか一瞬見失うけれど、きっとジャスミンの混乱の表れかと思います。
万人受けはしないかな。意地悪な人向け。善良がモットーな方には向かないかも。その上わかりやすいのが好きな方には眠たい系です。
女性のズルいところ
ケイトブランシェットの美しさは凛としたものがありつつだんだんと精神を病んでいく姿がみえて切ない。
プライドというか、ステータスがハイからローにはなかなか難しいのはわかるけど。
何よりも妹ジンジャーもパーティーで知り合った男性といいかんじになったら彼氏をなんとなくキープしつつ、ダメになったら彼氏に戻る姿。
ジャスミンも結局元旦那などに寄生してたから過去に囚われる姿。
女のズル賢い部分と人の脆さ、自業自得な転落劇。嘘をついていく姿は切なかったけど後味は悪くなかった。
クズで潔い
メンヘラのおばさんが最終的に本格的に狂ってしまう残念な話だった。主人公が本当にクズだった。
里子を愛人にしてしまうようなおじいさんが作っているだけあって、親子の情のようなものは、すごくあっさりと何の興味もなさそうに描かれていた。全部の登場人物が自己中心的な欲望に忠実な人間であり、感性の若々しさや瑞々しさが感じられた。しかし、その自己中心性のいきつく果てが発狂であるので、客観性はあるのかなと思った。
ウッディ・アレンは自分以外の他者を、自分以上に大切に思うことは一生ないのだろう。彼にとっての恋愛は、自分の幸福の追求以外なにもないところに一貫しており、徹底していて潔い。
アンドリュー・ダイス・クレイを久しぶりに見れた。そんな役なんだけど、すっかり冴えない中年になっていた。ケイト・ブランシェットは鬼気迫る感じがした。
クズが主人公の映画は大好きなんだけど、女のクズは痛々し過ぎて見ていられない。男の立場でそれを描くのは、いかがなものかなと思う。
張り子のトラ
ジャスミンは「オサレで充実したワタシ像」を激しく愛している。
それが例え「張り子のトラ」だったとしても。
彼女の上昇志向・虚栄心・自己愛。
私は、セレブっぽい上昇志向とは縁遠いものの、別ベクトルの虚栄心はあるなあと自覚している。なので、この映画を観て「身につまされる」部分もあった。
(「身につまされる」というよりも、「ここまでヒドくない」という安心感か…。他人と比べ安心するというのは虚栄心の最たるものだなあ…。)
本作に、「張り子のトラ」の行き着く先を見せてもらった気がする。
あんな終点は辛い。
彼女の行く末を観るのは、どこかに自分の片鱗があり、痛く怖くもあるのだけれど、自分自身を嗤う快感も同時に湧いてくる。
私の「張り子のトラ」捨てなきゃなあ。本作観た後、見栄張って肩肘張ってた部分がほんの少し軽くなったような気がした。
—
本作は、ウッディ・アレン版『欲望という名の電車』だという人がいて、なるほどなあと思った。(確かに設定等かなり重なっている。)
ただし、
『欲望〜』の方は、壊れかけた女をとことん追いつめる男が居て、それによって女は更に壊れていく。
本作には、そこまで追いつめる男は出てこない。ただひたすら本人の自爆で壊れていくばかりである。「誰のせいでもない」という突き放した感じが、現代風でありアレン風なのかなとも思う。
『欲望〜』のエリア・カザンは、女の愚かさを「悲劇」として描いたが、本作のアレンは「悲劇」にすらしない手厳しさがあるなあと思った。(悲劇だと同情できるけど、本作は同情とかそういうのを突き放している。)
愚者を、手厳しく突き放し、笑い皮肉りつつ、その一方で彼らの五分の魂を描いてみせる。
—
『欲望〜』のビビアン・リーは、悲劇ドップリに主人公を演じた。
本作の主役ケイト・ブランシェットは悲劇を避けて演じてみせた。
私は、『何がジェーンに起ったか?』(姉妹のうち片方が壊れてしまう物語)のベティ・デイビスを、連想してしまった。
ベティ・デイビスは狂気を、ホントに怖く演じた訳だが、そのやり切った様から「達成感」のような清々しさも感じてしまう。そしてまた本作のブランシェットも、やり切っていてどこか清々しい。
—
追記:個人的にだが、アレック・ボールドウィンも良かった。虚栄の恋物語を無駄にカッコ良く演じている。
シニカルな。 作品より演技を楽しむもの?
観終わって一番に出てきた感想は
ジャスミンが可哀想というか、
痛たたたというか(自業自得みたいな?)、
ひゃー怖い…というか、
そりゃもう色々な感情が出てまいりました。
ブランシェットはそういう意味では
演技がハマり過ぎてて役にまったく違和感がありませんでした。
こんな人と付き合うと大変だなー…というヒステリックさが、よく滲み出ております。
ストーリー自体はライトなタッチで
時折音楽を混ぜていくあたり、
最近でいえば「LIFE!」に近いのですが
いかんせん、その本筋が
「ひゃー、キツいなコレは…」
↓
「あ、やっちまったな…」(ジャスミンが嘘付いて誤魔化すところ)
↓
「あー、まぁ仕方ないわな…」(嘘がバレて自暴自棄になるところ)
大きくまとめるとこんな感じで
たとえ、落ちぶれようとも
虚像の花で美しく着飾りたい
そんな生き方がまったく共感できないので。
いやはや、この作品の場合逆にそれを狙ってやっているから凄いのか。
しかし、民放のワイドショーだと
「元セレブの痛すぎる生活実態!」
みたいな感じでサラリと流されそうだなー。
それを作品として創り上げた所が凄いんですかね。
とても良かったです!!
はっきりいってウッディアレンは、自分大好きっていう感じで好きじゃないんですが、この作品は「俺をみて!」的な作風は影を潜めて、監督に徹しています。
精神的に問題を抱えつつも生きようと四苦八苦するケイト・ブランシェットの演技がリアルすぎです。ほんの一瞬ですが結構努力して底辺から地道に這い上がろうとする姿には心を打たれましたが、結局はメッキがはがれて他力本願と厚みのない人格が露出、その後もう一度奈落の底へ。振り出しにもどるどころか、スタート地点よりだいぶ下のほうまで転がり落ちてしまう有様。そんな様子を見て同情よりもむしろ笑いがこみ上げてきてしまうように映画を仕立て上げた監督は、なかなかハイセンスだと思います。
全28件中、21~28件目を表示