劇場公開日 2014年5月10日

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「現実をいきられなかった主人公」ブルージャスミン kuさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5現実をいきられなかった主人公

2014年12月26日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

序盤から最後にかけて、本当に人間の情けないところを集めてしまったような主人公ジャスミン。それをケイトブランシェットが見事に演じられていて、ただただ素晴らしかったです。
美しく、華やかな衣装で着飾った彼女と、かんしゃくを起こし、身も心もぼろぼろになった彼女はまるで別人。素晴らしい女優さんだと改めて思いました。

お金がなくなったのにお金があった頃の生活から抜け出せず、ファーストクラスを予約してしまったり、ヴィトンのスーツケースを使ったり・・。「自分は庶民と同じじゃない」という長年の贅沢生活で培ってしまったプライドが、いつまでも彼女を現実の世界へと向き合わせようとしません。今の生活に適応することにどうしても耐えられず、嘘をついたりして自分の首を絞めてしまいます。

本当に最初から最後までジャスミンは嫌な女だし、「こんな人いるいる・・」と思ってしまうのですが、でも一方でとても感情移入できる主人公でもありました。
それは、人間なら誰しも持っている情けなさを彼女が体現しているからだと思います。受け入れられない現実に直面した時、どうしても人間は夢を見たくなると思います。今目の前にあることをまずは少しずつこなしてゆく。これが未来を作る近道であることが頭ではわかっていても、それがいつまでなのか、本当に未来は作れるのか、先の見えない不安がどんどん先に膨れ上がり、やがて耐え切れず、投げ出してしまう。そして根拠のない自信にすがり、全く見当違いな夢の世界に走ってしまう。余裕がなくなってしまい、自分に味方してくれる人を攻撃したり、慰められると下に見られたような侮辱感を感じる。

これはジャスミンや大富豪に限らず、結構人間だれしもあることなのではないでしょうか。

とても胸をちくちく刺すような、リアルなお話でしたが、ウディアレン監督は巧いなと思います。最初と最後の始め方、締め方がなんとも美しく、シリアスではなく、まるでコメディっぽく感じます。重たい空気にはさせません。そこも大好きです。

ku