「もう一つ踏み込んだ何かが欲しかったかも」I am ICHIHASHI 逮捕されるまで スペランカーさんの映画レビュー(感想・評価)
もう一つ踏み込んだ何かが欲しかったかも
英会話講師リンゼイ・アン・ホーカーさん殺害事件は、当時長きに渡って報道されていたので、今でも記憶の中に鮮明に残っていたりします。
おそらく日本国民のほとんどの方が目にしたことのある事件だったのではないでしょうか。
そんな事件を描いた作品なのにほとんど話題にならなかったことから、ある程度想像は付いていましたが、やはり当たり障りのない内容と言うか、想像そのままと言うか、もっと深く切り込めなかったのかと思いたくなるような、微妙な線の仕上がりだった印象ですねぇ。
殺人犯・市橋達也の手記を元に作られたからか、どうしても自己弁護感は否めず、もっと何か初めて語られるような新事実でもあればまだ良かったのですが、生い立ちも殺害動機もほんのりと語られただけで、後は逃亡生活をただただ描いただけだったのは、何かこう消化不良と言うか、せっかくこの題材を映画化したにしては淡白な内容すぎてちょっと勿体無かったなと・・・。
どうせ批判される題材なんだから、ここまで来たらとことん攻めても良かったような。
まあでもわざわざそんな黒歴史になることなんて誰もしたくはないでしょうから、有名どころが手を付けなかったのも至極納得。
しかしあえてなのか監督・主演・主題歌まで担当と一人で火中の栗を拾いに行ったのが、当時日本ではブレーク前だったディーン・フジオカだったんですね。
もしその後ディーンが朝ドラでブレークしなかったら、この映画はひっそりとまるで元々無かったかのように、この時期にはもう人目に触れることもほとんどなかったのでしょうが、ディーンの大ブレークで再び注目されることとなってしまったのは、遺族にとってはお気の毒としか言いようが・・・。
まあディーンファンにとっては、唇を切るシーンはかなり痛々しかったですが、多才な才能とイケメンを堪能できる掘り出し物の一品になったかとは思いますけどね。
でも逃亡劇にしては、やっぱりイケメン過ぎたかな(苦笑)
まあイケメンは置いといて、何故彼は逃げ続けたのか、その辺は何となく分からないでもなかったかも。
人を殺しておいて全く持って自分勝手な輩ですが、この男は劇中でも人の気持ちを考えたシーンは無かったですから、そう言う行動をとる人間だろうなと妙に納得。
それらを踏まえて、もし自分が間違って人を殺めてしまったとしたら、一体どう言う行動をとるのだろうか・・・そんなことをふと考えさせられた作品ではありましたかね。