「終わらない悲劇」フルートベール駅で arakazuさんの映画レビュー(感想・評価)
終わらない悲劇
この映画は、2009年の元日、カリフォルニア州フルートベール駅のホームで実際に撮影された映像で始まる。
喧嘩騒ぎで停車中の電車から黒人青年のグループが降ろされ、警官に拘束されたのだ。
武器を持たない丸腰の青年オスカーがうつ伏せに組み伏せられた上、警官に撃たれ、命を落とした。
ストーリーはそこから前日の2008年大晦日の朝に遡る。
オスカーの新年の誓いは「売人をやめること」。オスカーには服役した経験もあり、遅刻癖がたたりスーパーの仕事もクビになっていた。
彼が問題を抱えていたことは確かだ。
しかし、彼は幼い娘タチアナと母親である恋人、母親、家族のために真っ当に生きようとしていた。
彼は、娘を愛し、母親の誕生日を忘れない、だれとでも直ぐに打ち解ける人懐っこい青年で、理由もなく人に暴力を振るうような人間ではなかった。
そんな彼の本質を警官は見抜くことは出来なかった。
大晦日の深夜、治安の悪い地域のあちこちで騒ぎが起きていただろうことは想像に難くない。警官たちもいつもより殺気立っていただろう。
黒人青年に対する偏見がその目を曇らせたことも確かだろう。
確かなことは、彼が殺される理由などなかったこと。
そして、この後も同じような事件が後を絶たないことが何よりもやりきれない。
コメントする