「人一人死ぬとは…」フルートベール駅で 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
人一人死ぬとは…
2009年元旦、一人の黒人青年が無抵抗のまま白人警官に射殺された。
この痛ましい事件を映画化。
映画は青年オスカーの最後の一日を綴る。
クライマックスまでは淡々と描かれ退屈に感じるかもしれないが、オスカーの人柄を知る上で重要パート。
ヤクの売人で逮捕された前科者ではあるが、轢き殺された犬を助けようとする心優しい青年なのだ。
恋人が居る。娘が居る。家族が居る。友人が居る。
刑務所を出所したばかりで、愛する者たちの為に心機一転、人生をやり直そうとした矢先…。
境遇は違えど、アナタの隣人、傍に居る人と変わりはしない。
何の邪念を払って見ても、オスカーに否は無い。
これは一方的な偏見と暴行。いや、殺人だ。
もし、オスカーが白人だったら、結果は違ったのだろうか。
些細な偶然と擦れ違いが生じて事件は起きた。
新年の祝いに電車で行った方がいいと言った母。
電車の中で偶然出くわした、顔見知りの女性。
電車の中で偶然出くわした、刑務所時代に因縁つけてきた男。
人一人の人生で、劇的な出来事はそう起こるもんじゃない。
が、人一人死ぬ。それはどれだけ大きく悲しい出来事だろうか。
先日もアメリカで、無抵抗の黒人青年が白人警官に射殺された事件が起きたのは記憶に新しい。
何十年も前ならまだしも、ごく最近だ。
確かにアメリカの人種偏見はかつてと比べると、良くはなってきた。
しかし、社会の片隅、奥底では、まだ根強く残っている。
こびりついた汚れはそう簡単に拭いきれない。
コメントする