「心に刻み込まれる名作」フルートベール駅で pullusさんの映画レビュー(感想・評価)
心に刻み込まれる名作
この作品に寄せる数々のコメントが届いている。その中で、「絶対に観てほしい」「今年一番の映画」という声が続々あげられている。
このコメントに間違いはなく、確かにこれは絶対に"見るべき映画"なのだ。
これは2009年の元旦、カリフォルニアのフルートベール駅で実際に起きた事件をもとにした映画である。無防備な黒人の青年が警察の手によって殺された事件だ。この悲劇にアメリカ中が動揺した。
もちろん当時のことを知っているアメリカの人々はこの映画に深く感銘を受けたことだろう。しかし、我々日本人には、アメリカの悲惨な出来事がどう映るだろう。日本という国は肌の色も同じで、拳銃も日ごろ目にすることなく、女性が夜中にひとりで歩くことのできる国だ。だからこの事件そのものも遠い話のように聞こえるのではないか。
応えは否。この映画は国境や肌の色、差別を超えたメッセージに溢れているのだ。1人の青年の尊い命が一瞬にして奪われた現実。それこそがこの映画がもっとも我々に伝えたいメッセージなのだろうと思う。確かに、アメリカ合衆国の現実を突きつける映画ではあり、怒りに震えることもあった。しかし、映画が気づかせてくれる大切なものとは、オスカー・グラント(マイケル・B・ジョーダン)の人生と、彼をとりまく家族と友人たちなのだ。
1人の人間の死というものがいかに重いものかを改めて実感させられる。そして死という現実からは決して逃れることができず、それはいつ我々の人生の前にはだかるかは誰にもわからない。
この映画は見る人によって様々なテーマを与えてくれるだろう。しかし共通して言えるのは、どのような形であれ、人々の心に刻み込まれ生涯忘れられない1本になるに違いない。