劇場公開日 2014年3月21日

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「【”Black Lives Matter !! " エンドロールで流れたテロップに怒りを禁じえなかった作品。一部のアメリカ白人警官の意識は50年経っても変わっていない事実に愕然とした作品でもある。】」フルートベール駅で NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【”Black Lives Matter !! " エンドロールで流れたテロップに怒りを禁じえなかった作品。一部のアメリカ白人警官の意識は50年経っても変わっていない事実に愕然とした作品でもある。】

2021年1月27日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

怖い

難しい

◆今作を観て、直ぐに思い出したのは、キャスリン・ビグロー監督が2017年に発表した「デトロイト」である。
 1967年7月に起こったデトロイト暴動を描いたこの作品は、特に白人警官たちが、黒人たちを銃で脅しながら40分にも渡り続く観ているのが非常に精神的にキツイ拷問シーンであった・・。何も罪を犯していない黒人たちを・・。

◆今作の冒頭で、そのシーンは銃声と共に描かれる・・。
 その後、その数週間前に時間軸は戻り、度重なる遅刻で店を首になり、恋人ソフィーナとの関係性も危うくなったオスカー(マイケル・D・ジョーダン)が、愛娘タチアナの姿を見て、少しづつ真人間になろうとするシーンが、彼の過去の収監された時のシーンを織り込みながら、描かれる。
 ここが、観ていて非常に辛い。
 観ている側は、この若き黒人青年の行く末が分かっているからだ・・。

◆彼は、勤めていた店に再就職しようと脚を運ぶ。その際に、恋人の好きな魚のフライの作り方をソフィーナの母に電話で聞いてあげたり、悪友のクスリの誘いも断る。
 そして、愛娘タチアナを抱き上げ、可愛がるシーン・・。

◆オスカーは、ソフィーナとの関係性を少し改善し、ママ(オクタヴィア・スペンサー:彼女の存在がこの作品をキチッと締めている。)の誕生日パーティーを楽しんだ後、ソフィーナ達と、サンフランシスコのニューイヤーフェスティバルへ向かう。母の”電車で行きなさい・・”という言葉を受けて・・。
 車中で、オスカーは魚のフライの作り方を教えてあげたケイティに声を親し気に声を掛けられるが、オスカーの名を耳にした且つて刑務所が一緒だった男に絡まれ、車中は騒然となる。そのまま、彼らはフルートベール駅で降ろされ、白人警官たちに取り押さえられる・・。何の罪も犯していないのに・・。
 そして、愚かしき警官の拳銃から・・。

<エンドロールで警官や駅関係者への処分が流れる。
 当時の状況は多くの客が動画で撮影しており、発砲した警官は逮捕される。
 だが、彼の抗弁により、懲役2年!僅か11カ月で出所したというテロップが流れる。
 ”アメリカの司法制度はどうなっているのだ!警官の制服を身に着けた、殺人者が、11カ月で出所だと?”
 オスカーを追悼するシーンで大きくなったタチアナの俯く姿に涙を禁じ得ない。

 この事件の後も、1992年のスピード違反をした黒人男性、ロドニー・キングさんを袋叩きにする白人警官たちの姿が拡散し、ロス暴動を引き起こした事も記憶に新しい。
 民主主義国家アメリカは、いつになったら、真の民主主義国家になるのであろうか・・。暗澹とした気分になった作品。
 私たちは、犠牲になったオスカーが”愛娘を抱く姿”を忘れてはいけない‥、と心から思う。>

NOBU