「観る者に解釈をゆだねる寛大さがほしい」2つ目の窓 ao-kさんの映画レビュー(感想・評価)
観る者に解釈をゆだねる寛大さがほしい
「殯の森」の河瀬直美監督の作品と聞き、難解な作品かと思って見れば、意外なほど分かりやすい物語構成に驚かされる。
奄美大島の美しい自然の中、ひとつの死から性への目覚め、そして生への繋がりを描いていく本作。テレンス・マリックの作品のような印象も受けるが、より現実的な世界観で物語を綴っていく。
それぞれの描写が時に生々しく、痛々しい。けれどもそれこそが現実だ。誰かの死を得て、それが生へと繋がっていく。そして、生ける者はいかなる形であれ、死を受け入れなくてはならない。様々な死が描かれていく中で、物語の転換点として描かれる穏やかな死のシーンは印象的である。
しかし、この作品は驚くほど台詞が多く、登場人物達の心境を必要以上に語ってしまったのは悔やまれる。特に中盤から後半にかけて描かれる主人公2人が性への目覚めから生へと発展していくくだりは台詞そのものがチープに見える。宗教、信念、哲学にも通ずる壮大なテーマを描いているが故に、説明するのではなく、観る者の価値観に解釈をゆだねる寛大さがほしかった。
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