「ハトまで普通だ。」青天の霹靂 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
ハトまで普通だ。
劇団ひとりの原作を本人が映画化。
脚本も新たに書き直しをしながら本番に挑んだようだ。
この人の描く物語は(以前に観た作品も)奇をてらった
ところがなくて直球勝負のまま訴えてくる感じがするが、
今回もそれは変わらず、いい意味で昭和風情が出ていた。
特に目新しい話ではないが、皆が泣ける家族のふれあい、
主人公の出生の秘密に絡んだ過去が徐々に明かされる。
売れないマジシャンの春夫(洋)が父親の死を目の当たりに
した瞬間、雷に打たれ、40年前にタイムスリップ、若き日の
父母に出逢い、自身のマジックに再生を賭けて挑んでいく。
やや暗い展開を見せるが、さすが芸人監督とあって舞台の
シーンになるとめっぽう明るい。単純に大笑いできる。
もちろん父母は彼が自分達の息子だとは思っていないので、
やたら世話を焼いたり面倒をかけたりしながら、友情?を
育んでいくのだが、春夫にはどうしても許せない事実、
母親が自分を捨てた過去に対するわだかまりが残っており、
それを問い正したい思いが強い。母の出産と自身の舞台を
前に、聞かされてきた話と違う真実に彼は戸惑うのだが…
普通に泣けてくる、いい話だ。
息子にとっての母親の立ち位置を明確に表している。
自分の人生が不幸だったのはこういう両親のせいなのだ。と
言い訳づけていた主人公が初めて見る両親の姿、生まれてくる
子供に対する愛情のかけがえのなさは誰が観たってウルウル。
どちらをとるかという(いかにも昭和の)TVドラマからとってつけた
ような展開も、そりゃ~母親ならこうするさ。が納得できる。
とはいえ息子には息子の「仕事で大成したい」夢もあるわけで、
その辺りの配分がなかなか巧い。かなりの特訓を積んで見せる
洋のマジックが最大の見せ場だろうが、裏では色々苦労があった
ようで、86テイクとは…お疲れさま^^;
セットだろうと思っていた昭和の町並みが、長野県・上田市に
実在するというのも凄い。どう見ても浅草にしか見えなかった。
完璧に拘ることは一発勝負の舞台に生きる人に重要なのだろう。
遊んでいるようで遊んでいない演出の生真面目さが伝わる作品。
(どこがインド人?で爆笑。スプーン曲げもヒモ芸も懐かしいv)