劇場公開日 2014年3月1日

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「『高度なギャグ』の裏から滲み出るヒトの生々しい性。」愛の渦 Opportunity Costさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0『高度なギャグ』の裏から滲み出るヒトの生々しい性。

2014年3月6日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

怖い

興奮

非常に良かった。

性交の回数と共に場の雰囲気がガラッと変わる。
雰囲気と共に炙り出される登場人物の性格、そして人間の性。
その生々しさ、浅ましさ、愛おしさにグッときました。

特筆すべきは、やはり門脇麦演じる「女」。
地味で自分に自信の無い若い女性が、ある分岐点を境に豹変。
その豹変ぶりに魅せられます。
中盤以降はその異様な存在感に目が離せなくなりました。
彼女の荒々しい動きと声。
これが観たくて聞きたくて、待ち望む自分がいました。

他の女性も体当たり演技が大胆かつ自然で良かったです。
女同士の距離感の図り方、裏でのディスり合いも巧かったと思います。

また男性陣も総じて良かった。
新井浩文演じる「男」が場の雰囲気を、流れを作る役割を果たしており、その軽薄さと動物的な優劣の判断/弱者の除外をする荒々しさが良かった。
また滝藤賢一演じる「男」も日常を引きずる人物としての序盤の働きが特に良かった。
ヌルッと出てくる動きも(良い意味で)気持ち悪い。

そして駒木根隆介演じる「男」。
こいつが劇場内の笑いを掻っ攫う掻っ攫う。
言動から醸し出される情けなさも良いのですが。
無防備な後姿の情けなさ、これが良かった。
終盤間際に報われる場面があるものの、その後の掌返し。
その唖然茫然、疑心暗鬼具合も表情/言動によく出ており良かったです。

場面場面で爆笑しつつ人間の性を垣間見えゾッとする。
怖いけど面白い。面白いけど怖い。
様々な感情が渦巻く中で、緊張と緩和が繰り返されて123分があっという間。

観終わった後の観客席は何か気まずい秘密を抱えたような感覚を共有しており、終盤の或る場面に似た雰囲気になっていました。
そんな雰囲気が味わえるのは劇場のみ。
是非、劇場に足を運んで他の観客と共犯になり、あの雰囲気を味わっていただきたい。

オススメです。

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Opportunity Cost