劇場公開日 2015年12月4日

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「実は4部作だったのではないだろうか 今作で過去作の亡霊を成仏させる その為の作品だったのではないだろうか?」007 スペクター あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0実は4部作だったのではないだろうか 今作で過去作の亡霊を成仏させる その為の作品だったのではないだろうか?

2019年5月7日
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鑑賞方法:DVD/BD

過去3部作でようやく21世紀のジェームズ・ボンドのスタートラインにたった
ようやく晴れてガンバレルから映画が始まる
つまりダニエル・クレイグのジェームズ・ボンドは正式に本作から始まったわけだ

本作は突き詰めると過去の旧シリーズのリメイクだ
ことによるとパロディだったのかもしれない
だってこういうのを世界中の観客が待っているのだから違うものを観せられないでしょというのが製作陣の意図だったのだろう
この作品を通過しなければ、本当の21世紀に生きるボンドの新しい物語を観客は受け止められないのを分かってのことだったのだと思う

それ故に、とことん過去のエッセンスをこれでもかとオマージュどころか、なぞったシーンを連ねてみせる
スペクターの登場もそうだ
これをだしてこそ007となるわけだ

スペクターとは亡霊の意味
つまり007シリーズの過去の数々の栄光の作品の亡霊に囚われている観客の妄執を成仏させるための映画だったのだ
いや、もしかしたら製作陣自身が自分達の持つ捨てがたい妄執こそを消し去りたかったのかも知れない

新ボンドの正式スタートは本作ではなかった
実は4部作だったのではないだろうか
今作で過去の幻影を絶ちきる
その為の作品だったのではないだろうか

ダニエル・クレイグのボンドは今までの3部作で21世紀に存在するボンドとは何かを再構築する為のものだった

そして今作はその21世紀に存在するボンドに、過去のボンドの物語をなぞらせてみせる為の作品だ
それで初めて亡霊は成仏する
そのような意図で製作されていたのだと思う

だからスペクターとプロェルドは今作で完結させる為に、あんなにもあっけなくやれれてしまうのだ
スペクターの秘密基地が大爆発で消え去る意味はこの亡霊を火葬してみせた炎だったのだ

前作のラストシーンがスタートラインではなかったのだ
ダニエル・クレイグのボンドは、前作ではなく本作のラストシーンが本当のスタートラインだったのだ

とはいえ、本作は単独作品としても面白い
見終わったらスカッとして007を観た!という気分になれる
それだけの仕掛けを十分に用意してある作品だ

冒頭のメキシコの死者の祭りが、終盤のプロェルドの正体の伏線となり、さらに冒頭のヘリと崩壊するビルが、クライマックスにおいて相似形で繰り返えされるなど見事な構成だ

次回作はリメイクでない、21世紀のボンドの活躍とは何かがいよいよ取り上げる段階の筈だ
それは一体どのような物語になるのだろう
大きな挑戦だ

エンドロールの最後の次回作をお楽しみにのお約束の文言の意味は今作ではこのような大きな意味を持っていたのだと思う

あき240
pipiさんのコメント
2022年8月10日

なるほど〜!
さすが、あき240さん。
相変わらずの鋭いご見解です。
オマージュなんてものじゃないですものね、今作。
それを消し去ることこそが目的かぁ。良い観点を与えて頂き感謝です♪

pipi
🐻さんのコメント
2021年3月1日

亡霊を葬ってボンドが完成したっていうのは確かにその通りかも。
スペクターの本拠地あたりから前時代のコミックのような薄気味悪い展開になった理由がやっと納得できました。
感謝。

🐻