「世界はその一端しか知ることができない。」悪の法則 クラゲ男爵さんの映画レビュー(感想・評価)
世界はその一端しか知ることができない。
この映画の肝は『世界はその一端しか知ることができない』ということではないだろうか。
弁護士の主人公は恋人との生活をより豊かにするために、麻薬取引という『闇の世界』へ踏み込んでしまう。どんなに警告されても、まさか自分がそのような目に遭うとは露ほども思っていなかったのだ。
そうして彼は唐突に、二度と引き返すことの出来ない所にまで堕とされてしまう。
『世界は一端しか姿を見せない』それを象徴するように、物語もまたその全貌をなかなかつかませてくれない(少々やりすぎかな、とも思ったけどw)。
バキュームカー(?)の中に隠して密輸する通常の取引に、マルキナ(キャメロン・ディアス)の一味が横取りするが、後にまた麻薬カルテルに取り戻される。
そのかわりにマルキナはウェストリー(ブラッドピット)を嵌めて、その資産を横取りする。
あらすじだけでも難解だが(自分は最後までわからなかったw)、この映画はさらに、説明をしないのだ。
誰が何をやっている人なのかも説明しないし、どれが偶然で、どこまでが計画されていた事なのか何も説明しない。
またマルキナの背後にどれほどの組織があるのかも語られず終いだし、麻薬カルテルの女を弁護したことも偶然なのか誰かの策略だったのか…。
それは主人公が垣間見ている世界と同じなのだ。
リドリー・スコット監督は僕たちに『神の目』を持たせてくれない。
その主人公と共に『世界の一端』を垣間見ることしか許してくれないのだ。
物語を語らない代わりに、彼らは世界を語る。
ある者は「本当は金がなくたってやっていける。女だけはどうしようもないがな」と言い、ある者は「君は岐路に立っていると思うだろう?けれどもう随分前にすでに選択はされているんだよ。君に出来る事は受け入れることのみだ」と語る。
たどり着いた結末は決して楽な場所ではなかった。
でもね。
それでも世界はほんの一端しか見せていないんじゃないかな、と思うのだ。
僕たちはその全てを知ることではなく、一端から学ばなくてはいけないのかもしれない。
そんな風に思ったり、思わなかったり(笑)。