「プロモーションのミスリードなどで評価の低い作品を全力で擁護させていただきます!!」悪の法則 さぽしゃさんの映画レビュー(感想・評価)
プロモーションのミスリードなどで評価の低い作品を全力で擁護させていただきます!!
見せなくていいものを見せて、
見せなくちゃいけないものは見せない。
意地悪過ぎる。でも、嫌いじゃない(はーと)。
カウンセラー(弁護士):マイケル・ファスベンダー
ローラ:ペネロペ・クルス
マルキナ:キャメロン・ディアス
ライナー:ハビエル・バルデム
ウェストリー:ブラッド・ピット
※久々にロージー・ペレスを見たよ。
豪華メンバーによる、メタサスペンス(すみません造語)ですよ。
カウンセラーはローラとの結婚を控えていた。そこで、ちょっと豪華なダイヤの指輪を買いたくて、やばい裏ビジネスに手を出してしまう。それからカウンセラーを含む、周りの連中の負の連鎖が始まりますよ。そして、麻薬の運び屋殺しを疑われ、カウンセラー&ローラはメキシコの裏組織:麻薬カルテルに追われる身となる。
前半小一時間、登場人物達による禅問答的な会話が続く。何気ない会話だったり、何かを示唆していたり、哲学的であったり、エッチな会話であったりするのですが、この謎な会話を読み解こうとすると、「見せなくちゃいけない物は見せないよー」と、邪悪な何かが、登場人物達の傍で蠢いているのを感じる。転じて、普通の生活を送っている私達の傍には、実は知らない悪が潜んでいるんではないか?と、戦慄したりする。
マルキナ「挑発しているのよ」
ローラ「?」
マルキナ「不思議な世界」
ローラ「この世の中が?」
マルキナ「いいえ、貴女の世界がよ」
マルキナにとっては、日曜日に教会に通う、まっとうなローラの生活の方が不思議ということ。このシーンが、マルキナのキャラを象徴してると思う。一般的な道徳や、規律、規則なんか通じない女。悪の象徴。そこで、冒頭のライナーの台詞が生きてくる。
「女どもには道徳観念がないせいか、そういう(影のある)男にに惹かれる。男も悪い女が好きだが、女の性格を直したがる。だが、女は楽しみたいだけ。男はとにかく、女を飽きさせないこと」
――女は楽しみたいだけ。
で、後半、がっつん、がっつん、人が死んでいく。 はっきり言うと、ハビエルもブラピも惨殺されて行く。あのいちどはめられたら逃れられない殺人兵器が、カウンセラーの運命を象徴する小道具になる。
ここ「見せなくていいものを見せて」くれる。でも、事件の全容なんか、事の真相なんか見せませんよ-。つか登場人物の過去とかも教えねーしwと言われる。やだ、意地悪。
ローラが殺されるシーンがDVDで送られて来て、表面には「Hola!(やぁ)」って書かれてる。なに、このセンス(笑)追い込まれるカウンセラーの脳裏に、この言葉が蘇る。「もう選択することはできない。あなたが選択すべきだった時はずっと以前にあった」そもそも、最初の選択ミスが、今の状態を作ってるんだよって。
なんか本作って、イソップやアンデルセンみたいな寓話的な要素もありますよね?最初に軽い気持ちで悪いことに手を出すと、大変な目に遭うんですよ!
ラスト、黒幕のマルキナはこう言う。あ、マルキナはチーター好きなんです。背中に、チーター柄のタトゥーを入れてるくらい。
「(チーターが)時速110キロで砂漠を走り、野ウサギを狩る姿。見飽きない。優雅に獲物を殺す様子を見ていると、心が震える。勿論、獲物を殺す姿は興奮する。ハンターには、優雅さと美しさがある。限りなく澄み切った心もね。美しい姿とその習性は、表裏一体なのよ。習性は殺すこと。私達人間は、まるで違うわね。(人の)心の弱さが、破滅の果てへと導く。同意しないかもしれないけれど、臆病者こそ残酷よ」
あれ?「習性は殺すこと?」習性なの?そこには法則は存在しないの?
本作は、マルキナのこの台詞で締めくくられます。
「そろそろ、お腹すいたわ」
えーっと。お腹が空いたハンターは、次の獲物が必要なんですか?
ぶるぶる。
なるほど。「悪に法則」なんかないのですね。少くなくとも、常人が理解できる法則はね。本作の邦題は、それを皮肉っていた訳ですね?分かります。
だから事件の全容も語らないし、登場人物の過去も語らない。だって、悪には明確な理屈なんかないから。意味ないじゃん!みたいな。私の解釈が正しいかは分かりませんが、もしそうならリドリー・スコット御年76歳にしてチャレンジャー!若いっすね!
キャッチコピーにあるような「黒幕は誰だ?」的な映画ではありません。ミスリードにもほどがある。
本作は"メタサスペンス"っす。