「非常に良かった!」白ゆき姫殺人事件 loptrさんの映画レビュー(感想・評価)
非常に良かった!
非常に面白かったです。
前回の「告白」と同様に色々と勉強になった、と思っています。
あと、井上真央さんの演技力がすごかったです。
以下、内容について、長文ですが、感想を書きます(ネタバレ含む)。
この映画の面白さは、ズバリ、「同じシーンなのに、語り手によって影像が微妙に違う」ところです。つまり、みんな自分の都合のいいように話をする、ということが、映像化されているところです。
自分の都合のいいように話をする、ということは、分かっていても、なかなか具体的にイメージが湧きづらいと思いますが、この映画を見て、「なるほど、こういうことなのか」と思いました。
そして、みんな完全にウソをついていない、ところも面白かったです。ところどころ、ホントのことを言うけれども、自分の意見を補うため、自分の立場を守るため、あるいは、自分を良い人に魅せるために、簡単にウソを織り交ぜている、というところが、なるほどなぁと思いました。
この映画を見て、リアル感が無くてつまらないという方も居らっしゃるかもしれません。
確かに、殺人の恐怖感、緊張感はそこまでないです。
風邪薬で寝てしまう点やコインランドリーで鍵かけてない点は、確かに少しリアリティーに欠けます。ですが、この映画のポイントは、殺人シーンのリアルさではないと思います。
人が簡単にウソをつくこと、都合のいいようにしか話をしないことは、日常茶飯事なことで、その点は、かなりリアリティがあったと思います。
また、赤星(綾野剛)が最後にボロボロになったことについても、簡単に、あっさりと、身近で起こりうる話で、怖かったです。(ここもこの作品のポイントだと思います。)
現実の世界(仕事や家庭)で上手くいっていない人が、ネットでちょっと目立ちたいと思ったがために、ツイッターに書き込むをする、というのは、誰もが簡単に出来てしまうことだと思います。
今回の話では、城野美姫が助かっているのでまだ悲劇にはなっていませんが、もし、自殺してしまっていたら?
ネットで目立ちたいというちょっとした出来心で、人を死に追いやるわけです。
ちなみに、この作品の一番の被害者は、赤星(綾野剛)だと思います。そして、赤星(綾野剛)と同じ立場に、誰もがあっさりなってしまうところも怖いと思いました。
(なので、綾野剛さんが事件の真相を暴いていく話のほうが面白い、というのは、よく分かりません。なぜなら、彼はミステリーでいうところの、刑事役探偵役ではなく、被害者なのですから。まあ、自業自得な被害者ではありますが。)
人は簡単にウソをつくこと、それも、悪気があるわけではく、ちょっとした保身のために、ウソをつくこと。そして、真に恐ろしいのは、それを鵜呑みにしてしまうことだと、感じました。
ネットは便利なもので、現代社会において、既になくてはならないものではありますが、その扱いについて、改めて、気をつけないといけないな、と思いました。
このレビューを読んだあなたもぜひ、「大切なことを見落とされないように」してください。
p.s.
城野美姫は、果たして、ホントに「完全にシロ」なのでしょうか?
この作品のポイントは、「人は自分に都合のいいように話をする」という点だとすると、城野美姫が手紙に書いて話している内容もまた都合のいい解釈が入っているのではないでしょうか。
(まあ、流石に私が人間不信すぎるだけかもしれませんが。)
そういった余韻を感じられるところも良かったと思います。