「こんこんコンコン。」ジャッジ! ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
こんこんコンコン。
映画というよりも、これ自体が巨大CMと化している作品。
冒頭からきつね(のちにネコ?)が登場して繰り出す歌と踊り、
これを何度も何度も見せられると、終いにはきつねうどんが
食べたくなる(これだもんねー)という、素晴らしき誘導の術。
他にもちくわ(覗けば未来が見えるとか何とか)、
トヨタ(これはホンモノのCM)、酒、運動靴、洗剤、などなど
分からなくても、その印象を残すが如くバンバンと出してくる。
さすがCMクリエイター達が製作しているんだな、と思わせる
広告塔といえる仕上がりになっていた。方々に仕掛けが満載。
肝心の物語の方はというと…割と普通、ともすれば感動作品。
いわゆる○○祭の裏側暴露!?という感じで、コネとカネが
いかに出回っているか、それがなけりゃ受賞なんてできるか!
という、できることなら見たくない裏事情を観せつけてくれる。
映画祭だってこれと似たようなもので、なんでこんな作品が?
と思うものがいきなり受賞して、驚くことだってゴマンとある。
結局はそういうことなんだよね~が分かっていても、やはり
観たくなるのがこちら側の心理ということも良く分かっていて、
CM製作の現場って凄いんだろうなー、を実感できるのがいい。
大滝一郎(豊川)は部下の太田喜一郎(妻夫木)に海外の広告祭で
審査員に成りすまし、ちくわCMをグランプリにするよう指示。
大田ひかり(北川)を偽妻に据えた喜一郎は、窓際上司の鏡さんに
必勝技を伝授され、ライバルの木沢はるか(鈴木)に挑むのだが…
主人公となる喜一郎を演じる妻夫木くんが会心の演技を見せて、
一発勝負のような賭けに出る。自社推薦のCM援護は捨て去り、
他社ながら最高のCMをグランプリにすべく裏で奔走するのだ。
自分が好きで入ったその世界をバカにするな!という仕事人の
心意気がそこで爆発、心に残る映像を短時間で印象付けるには
かなりの作戦と知恵を絞っている事実を露呈する。広告祭で
選ばれるのはそれなりの作品になるが、お茶の間のCMで人気
を博すCMには、完成度云々の前にインパクトの強さが重要で、
どれだけの人をCMに一分弱釘付けにできるか、が勝負になる。
その点、きつねうどんにちくわを添えてトヨタはいいね、なんて
思う観客を増やしたことにおそらく今作は勝算があったはずだ。
とにかく、あのきつねうどんのCMが頭から離れない~!!
(向かい風を追い風に変えるCMはステキ。芸術作品みたいで)