「池脇が切なく可愛い」そこのみにて光輝く よしたださんの映画レビュー(感想・評価)
池脇が切なく可愛い
クリックして本文を読む
遠近法を強調した被写体の配置で、どの人物の感情にフォーカスしているのかを明確に表現した画面。光彩のトーンは、背景から射し込む光をデフォルメして、その場の登場人物の感情を表しているかのよう。画面の力が、セリフ以上に人物の感情を表している作品だと思う。
池脇千鶴がとてもいい女優になったと思う。
彼女の演じる千夏を含め、登場人物たちはみな社会の周縁で寂しさを抱えている。地方都市といえども、彼らの境遇や孤独を受け入れてくれる温かみはなく、大都市のようにその大きな渦にのみ込んでくれるわけでもない。千夏の不倫相手も、町の顔役であり、造園業者を営む経営者ではあるが、一人で会社と家庭を守らなければならない孤独からは逃れることができずに、千夏とのセックスに依存している。ここでは社会の誰からも見つめられることがなく、その中に居場所を見つけることができないでいる。
千夏の弟は、家族のために採石場で働く決心をする。
採石場の事故で部下を死なせた佐藤は、千夏たちのために、辛い記憶を克服して仕事への復帰を決意する。
そして、千夏は、寝たきりの父親を殺して、家族の負担を減らそうとする。
こうした彼らの新しい決意は、すべてが実現することにはならないのだが、そこには暖かな光の射す彼らの居場所が現れるのだ。
ラストの陽光の中で微笑む池脇がとても美しく可愛い。
コメントする