「作品が輝く瞬間がなかった」そこのみにて光輝く つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
作品が輝く瞬間がなかった
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ある程度いい映画には印象に残るシーンというものがあるものだ。作品が輝く瞬間とでもいうだろうか。それが本作にはない。
脚本は良いのにイマイチ気持ちも作品ものらないのはそのためと思う。
ラストシーンはまあまあ良かったが、一番良かったのは食堂で達夫と拓児と千夏の三人が笑う場面だ。固定カメラの長回しで、キャストの演技力だけに頼ったシーン。
ここだけ考えたら良いシーンだ。しかし多くの場面で固定カメラの長回しをしたせいで、インパクトが薄れてしまった。
呉美保監督作品は初めてなのでこういう作風なのかわからないが、出演者が良すぎて余計な演出をしたくなかったのかもなと考えたり。
良すぎる演技力が作品の足を引っ張る事もあるのだと思った。
あとは、何気に一番重要な役と思われる拓児の心情描写と変化が掴みにくかった。
ただのお気楽な能天気青年のようにみえる拓児にも思うところはあるって部分は重要だと思うんだよね。
今までは耐えていたのか、それとも彼の中で変化があり怒りを覚えたのか、もしかしたら最初から突発的なだけなのか、解釈の余地があるのはいいことだけど描写不足により余りにガバガバで、これでは何も描けていないのと違わない。
突き抜ける瞬間を待ち続けて最後まで突き抜けなかった見所の薄い作品。
つまらなくはないし演技も良かっただけに何だか勿体ない。
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