劇場公開日 2014年4月19日

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「暗い海でも水面は光る。」そこのみにて光輝く エマノンさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0暗い海でも水面は光る。

2017年2月22日
iPhoneアプリから投稿

この映画の設定、始終暗いと評する人もいるが私には懐かしさを感じさせる暗さであった。お金がないと人は正常な判断はできない。生活に必要ならお金を手に入れるために仕事は選べないし、これ以上失いたくないからこそ、今の生活にしがみつく。どんなクソな繋がりでも繋がってしまう。それを何とも思わないように生きてるけど本当は自分が1番惨めだと知っている。
だからこそ、この作品の結末を私は見たかった。彼らはどんな風にこの世界を生きていくのか。
この作品のなかで生きる人たちが私はとても好きだ。不器用で実は愛情深い綾野剛も、生活感があって色気がある池脇千鶴も、わざと明るく振る舞う菅田将暉も。 作中の人物は絶望的な生活だから悲壮感を漂わせるのではなく、泥臭く生きている。「生きる」ためにひたむきに救いを求めている。
作中、BGMのように「ここからどこにも行けない閉塞感」みたいなものが流れているけど、食堂で3人が集まって笑うところや、綾野剛と菅田将暉の自転車の二人乗りのシーンとか、綾野剛が池脇千鶴に心を開いて抱きついて泣いたりとか、キラキラとした人生の美しさを感じる。絶望だけを描く映画はたくさんあるが、この映画は人生の尊さを描いてて素敵だ。
ラストでもとくに、何も語らずとも彼らは生きていける。そう思わせてくれる力がある。

そして綾野剛…ずっとこういうのが見たかった。善人でもペテン師でも不良でもなく、こういう不器用で揺れやすい男の役が似合ってる。彼は言葉ではなく目で語るのが上手い。仕草や姿勢、空気感、とにかく美しかった。今後綾野剛にはそういうの役を与えてやってくれないか…

菅田将暉くんは本当にジャンルを選ばない。
どんどん演技上手くなっちゃう。面白いヤツのツボを完全につかんでしまってる。最初うわーうぜえなって感じなのに、自首する時引き止めたくなる。
天真爛漫な感じが綾野剛の部下にちょっと似てて、最初の出会いのシーンで綾野剛が数秒固まるところで重ねてたのかなと思った。

池脇千鶴さん、久々見たけど相変わらずそこはかとない色気。美人やらスタイルがいいのでなく、本能的に抱きしめたくなるあの存在感は何…。年齢すらも分からなくなる…恐るべし。アイドルやらモデルなんか目指さすより、池脇千鶴さんのように自分の美しさの引き出し方を分かる人になって欲しいです、日本の子供たちよ。

エマノン