「度を過ぎた行いは決して正当化されない」相棒 劇場版III 巨大密室!特命係 絶海の孤島へ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
度を過ぎた行いは決して正当化されない
「相棒」劇場版第3弾。
スピンオフも含めると5作目で、すっかりシリーズ映画として定着した。
何やらあちこちで酷評レビューが目立つ。
「相棒」好きなので、いきなり出鼻を挫かれた感だったが、実際見てみたら、そこまでボロクソ言われるほどでもないと思った。
東京都の果ての果ての孤島で起きた殺人事件。
自衛隊、警察、そして民兵の思惑と陰謀が交錯する。
舞台は異色だが、時事問題を絡めた、「相棒」らしい社会派サスペンス。
ラスト、右京が犯人に言い放つ、「あなたの方こそ犯されてますよ、国防という名の流行り病に」の台詞が、今回のテーマを表している。
また、改正しようとしている某憲法を突っついている事も明白だ。
国防。国を守る。
立派な行いだと思う。
ラストの犯人の言い分も、全く分からない訳ではない。
もしもの時、某友人国が守ってくれるという100%の保証は無い。
自分の身は自分で守る。その為にはある程度の武器も必要。だが…
ラスト、右京と犯人の会話で、核兵器の保有を引き合いに出したが、核で攻撃されたから核でやり返すなど、もはや国を守る正義の行いではない。
それは寧ろ、大量殺人であり、戦争の引き金になり、大きな悲劇を招く。
“やられたらやり返す”という台詞が流行になったが、度を過ぎた行いは決して正当化されない。
彼ら民兵は、確かに無差別なテロリストではない。
しかし、その危険思想は、かつての連合赤軍にしか感じられなかった。
さて、重たい話はここまでにして…
「相棒」好きならではの楽しみも勿論あった。
密林に覆われた孤島でも、ばっちりスーツを着、紅茶を飲むさすがの右京さん!(笑)
お馴染みの面々が登場すると、やっぱり安心する。
今回、season12で卒業した三浦さんが居た事が嬉しかった。(という事は今回の映画は、時系列的にseason12の前)
そして何と言っても、2代目相棒・神戸くんと現相棒・カイトくんの初対面!
新旧相棒の顔合わせは今回が初!
難しい題材だけに、賛否が出るのは当然。
そんな題材に切り込み、社会派エンターテイメントにしながら訴えを込め、今回も見応えあった「相棒」劇場版だった。