劇場公開日 2014年4月26日

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相棒 劇場版III 巨大密室!特命係 絶海の孤島へ : インタビュー

2014年4月25日更新
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水谷豊、3代目“相棒”成宮寛貴と臨んだ劇場版で実感したさらなる進化

10年ひと昔とはよくいうが、それ以上の長きにわたり、ひとつの役と向き合うのは容易なことではない。だが、水谷豊は「まだ何かあると思わせてくれる」と、杉下右京の計り知れない魅力を探求し続けている。その支えとなっている一因がもちろん、相棒の存在。3代目となる甲斐享(カイト=成宮寛貴)を迎えた「相棒 劇場版III 巨大密室!特命係絶海の孤島へ」でも、抜群のコンビネーションで国家の存亡を脅かしかねない難事件に挑む。(取材・文/鈴木元、写真/江藤海彦)

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記者のようなアラフィフ世代にとって水谷は、「傷だらけの天使」の乾亨であり、「熱中時代」の北野広大として強く印象づけられている。それから35年以上が過ぎ、振り返ってみれば「相棒」は2000年6月の2時間ドラマから数えて間もなく丸14年となる。まさに継続は力なりだが、難しさは感じていないという。

「これだけやってきているのに、まだ何かあるんじゃないかって思わせてくれる、それが『相棒』なんです。若い時は同じものをこんなに長くはできなかったですよ。これだけだと思われちゃ困る、みたいなね。でも今は、ひとつの世界の中で奥に入っていくようになっているんだと思うんですよ」

和泉聖治監督や脚本の輿水泰弘氏が、右京に次々と試練を与え続けるストーリーテリングの妙味はもちろんある。加えて、コンビを組む相棒が新陳代謝を繰り返していることも大きな要因だと語る。

「カイトくんが来たことによって、今までできなかったことができる。そういう関係だから、見ている方も楽しいんじゃないかと思う。僕は意識していないのに、父が息子を見るような目をしている時があるって言われるんです(笑)。ナリ(成宮)に言わせると、兄貴みたいにも見えるし時々は弟に見えるらしいんですけれど、僕の中で世界が広がっているのは、カイトくんが入ったことによって広がったものが当然あるわけです」

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だからこそ、連続ドラマでも映画でも右京のスタンスは一貫している。劇場版のパート3の製作が決まった際も、特に気負うことはなかったと述懐する。

「そもそも『相棒』は、綿密な計算のもとに作られてきたわけではないんです。今何ができるんだろう、どうしたらいいんだろうということを積み重ねてきた結果。やれることをやってきているだけですから、不安やプレッシャーはないんですね」

一方の成宮は、一昨年10月スタートの「シーズン11」から“配属”され、その撮影を終えて、時間を空けずに映画のクランクインを迎えることになった。

「もう映画? というところはありましたけれど、(ドラマの)『相棒』は初回やお正月、最終回と拡大枠放送もあるので、長編ということに対するプレッシャーはありませんでした。でも、やっぱり映画というのは大きなスクリーンを埋めるだけのパワーも持たなければいけないし、そういう部分では気合を入れた感じでした。始まっちゃえば、もう島に閉じ込められていたので……(笑)」

そう、サブタイトルからも分かるように、主な舞台は鳳凰島という太平洋に浮かぶ小島。ここで訓練を続ける元自衛隊の民兵組織の1人が、馬に蹴られて死亡するという事故に右京が疑問を持ったことから、警視庁、警察庁、防衛省をも巻き込んだ事件へと発展していく。その端緒を持ってくるのが、警察庁に戻った2代目相棒の神戸尊(及川光博)だ。冒頭で新旧相棒の初対面というファン垂ぜんの演出があるが、水谷はこれも予期していたようだ。

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「警察庁に行くということは隣のビルにいるわけですよね。だから劇場版IIIがあったら必ず出ることになるよって、及川みっちゃんに言っていたんです。そこでカイトくんと会うことになるっていうイメージは、僕の中にはあったんですね」

だがうれしくないはずはなく、実際、撮影では喜びを隠しながら臨んだようだ。成宮も感覚は違えど、その場面を笑顔で振り返った。

水谷「僕たちが(特命係に)入っていくと、神戸くんがいるじゃないですか。右京ってあまり友達がいないですし、部下もどんどん辞めていっちゃうし(笑)。だから、自分のかつての部下と今の部下が2人いるなんて、右京にとってもうれしい瞬間でした。顔には出さなかったですけれど、そんな感じで2人をチラッと見ていました」

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成宮「前の相棒と会うって、なんか不思議な感覚ですよね。先輩というか、こういうふうに右京さんと付き合っていたんだという距離感やしゃべり方が垣間見えた。もちろん(自身が出演する以前の)シリーズは見ていますけれど、知らない設定ですからカイト的にはすごくうれしかったですね」

神戸に言葉巧みに唆されて!? 2人が向かう鳳凰島は、警視庁管轄のため設定は東京都だが、撮影は約1カ月にわたる沖縄ロケが行われた。2人はジャングルのような密林を駆け回り、嵐の中を奔走する。常にビシッとスーツを着こなす右京が泥にまみれ、水浸しになるなりふり構わない姿は新鮮だが、2人ともそれほどの大変さも感じず撮影を楽しんだようだ。

「大自然でしたからね。ジャングルのようなところに行くとそれなりの構えができますし、かなり大きなものを相手にしなきゃいけないとなると、我々もそれに合わせて向かっていくだけのエネルギーを持ってから行くので。右京にとって大切なのは事件を解決することですから、それ以外は眼中にないんでしょうね」

成宮「動物的なアドレナリンが出ていましたよね。こっちに行くと危ないんじゃないかって、かなり感覚が研ぎ澄まされた状態でしたね」

その一方で右京が、ゆっくりと川辺で大好きな紅茶を味わうおなじみのカットも用意されており、水谷は「あれは持って行ったんです。ティーポットもカップも全部(笑)」と説明。すると成宮が、「すぐ帰る予定だったんでね、最初は。でも、右京さんが(事件性に)気づいちゃうから」と冗談めかす。こんな息の合ったほほ笑ましいやり取りにも、2人のきずながより深くなっていることをうかがわせ、水谷は相棒の成長に目を細める。

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「最初はいろいろと相手を探っていましたけれど、エピソードを重ねていくとだいたい相手のことが分かってくる。すると2人でやれることが増えてくるんですよね。さあこれから、2人でいろいろできるなってところへ来たような気がします。だから楽しみ。2つのシリーズと映画を経験して、ここから2人が次のステージに向かっていくなと感じます」

“上司”からのお褒めの言葉を神妙な面持ちで聞いていた成宮は、表情を引き締める。それが今後への期待と課題だと理解しているからで、さらなる意欲を燃やす。

「『相棒』がなぜ、こんなに愛されているのかということが現場で実感できました。これが『相棒』の良さなんだということを毎シーン毎シーン感じられる作品で、それをちゃんと考えながら豊さんと僕がその世界を大事にして作っていく。今までのスタイルをぶっ壊しても良くて、どんどん新しいものに変えていくところは、豊さんから勉強させてもらっています」

すかさず水谷が右京の語り口で「君、いいこと言うね」と相好を崩す。加えて「『相棒』は本当に結論が出ない問題を扱いながらも、“相棒ワールド”としての結論は出さなければいけない。だから、2人で未来へ向かっていこうという話はした」そうで、成宮も同意する。その思いは全スタッフ、キャスト共通のはず。“相棒ワールド”は15年目に入っても、ますますの広がり、進化を遂げていくと確信した。

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