「楽しいなあ」オンリー・ゴッド 小二郎さんの映画レビュー(感想・評価)
楽しいなあ
楽しいなあ、この映画。今時『エルトポ』に捧ぐってどういうつもりなんだ?確かにテーマやキャラ設定が薄ーく『エルトポ』。何より素っトボケた所が『エルトポ』。笑っちゃいけない真面目な贖罪の物語だが、素っトボケてる。
他のレビュアーさんも書いてるけど『シャイニング』&リンチな所もあって楽しい。アルジェントの情念、若き日のアンソニーウォンが暴れてた頃のアジアンテイスト、中村主水顔負けの昼行灯っぷりも付け加えておきたい。
これだけいろんな物が混じると悪酔いの一つもしそうだが、バットトリップしないブレンド具合。理屈より感覚先行の酔わせ加減が丁度いい。ゲイジュツ方向だけに突っ走らないボンクラ度合いも楽しい。
そしてこれ商売っ気タップリな所も良い。監督の出身地デンマークでしんねりむっつりカルト映画をチマチマ作るんじゃなく、セリフが英語でソコソコの役者も使ってカンヌにも出してっていう商売っ気丸出しな図太さ。その図太さで「毒は社会の薬である」っていうホドロフスキー訓を実践してってほしい。
レフン監督は観た人皆が納得&感動するような映画はクソだと考えてると思う。だからこの映画には「賛」だけではなく、つまんねーくだらねーという「否」の感想も絶対に必要。監督はそこらへんの計算もちゃっかりしてるような気がする。
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蛇足だが、レフン監督を追ったドキュメンタリー『Gambler』が面白い。
『FearX』で大失敗し破産したあと『プッシャー2&3』でなんとか復活しようとしている頃に撮られたもの。監督が奥さんから
「あんた、いつまで夢を追ってボンクラ映画ばっかり撮ってるの?さっさとお金稼いできなさいよ」(意訳)と説教くっらてるところが楽しかった。強面の映画を作ってる割には恐妻家だなあとしみじみした。
そりゃあんな怖い奥さんがいたら、ボンクラと商売を両立させようと頑張るわなあと「オンリーゴッド」観ながら思った。