「ムードが良い。最後まで見させてくれた。」オンリー・ゴッド 葵須さんの映画レビュー(感想・評価)
ムードが良い。最後まで見させてくれた。
最初に、この作品が気になっている人に注意。この作品は自分的にキツいと感じるグロい描写が複数箇所であった。なので耐性が無い人には注意を願いたい。
全体を通して暗い背景にネオンのような原色のイルミライト、近未来的な重厚感ある無機的なBGM(テクノっていうのかな?)で描かれており、主演であるライアン・ゴズリングがブレードランナー2049の主演であったこともあり、BladeRunnerやCyberpunk2077を想起させずには居られなかった。実際は内容は別に未来のことではない。BladeRunnerにはかすりもしないが、Cyberpunk2077にはマフィアの抗争的な部分があったと思うので、似ている感じもある。
内容は警察と麻薬マフィアの仇討ちを目的とした復讐の連鎖による抗争劇。その中で主人公ジュリアンと母親の歪な家族間も表現されてはいるが。それらには自分の胸の奥まで来るような良い作品なら持つことができる深いテーマ性は感じられなかった。この作品にはテーマ性や内容よりもその映像的な表現方法に目が向いた。物語を引っ張る主演ジュリアンと敵チャンはどちらも寡黙であり、無言で動いている様子が多用される。それを見て何を感じるのか?といえば、視覚、聴覚、に一番影響を与える部分である映像とBGM。そこには内容よりも画面の中のいち場面をアートを見る時のように見る姿勢に近かった(しかし、登場人物への感情移入はこの作品では失敗といえるほど希薄であるため、見るといってもその見どころは感情や心情によるものではなかった)。
この作品にテーマがあるとしたら、復讐は止まらない(もしくは相手の力を見てやれという)こと、ジュリアンとクリスタルの間にあった歪な家族関係だと思う(どちらも深堀りはあえてしてないようなので、あえてテーマを考えればの話になる)。
適役のチャンという人物像については、見た目と寡黙な様子から、サングラスを外したタモリ型私刑ロボットといえる様相であった。肩を上げて背中から刀を抜き出す様子には、不自然さ(演じている感)を感じたし、肩、痛くないのかな?という演者への心配を引き起こすものであった。
マイという娼婦はチョイ役ではあるが一番感情移入できたかもしれない。彼女がジュリアンに恋人役をしてくれと言われて無理に家族会議に登場させられ、「なんなんだこいつら?」と顔芸を披露してくれる場面には、一般人である一視聴者として感情移入させられた。
結論というほどのものでもないが、この作品はテーマを求めて見るようなものではなく、表現方法を楽しむという形でみたほうが良い。途中でダレるのを感じることは私は無かった。