「アレハンドロ・ホドロフスキーに捧ぐ←この人だれ?って方には向かない作品。」オンリー・ゴッド さぽしゃさんの映画レビュー(感想・評価)
アレハンドロ・ホドロフスキーに捧ぐ←この人だれ?って方には向かない作品。
舞台はタイ・バンコク。ビリー(トム・バーク)とジュリアン(ライアン・ゴズリング)兄弟は、ボクシングジムを経営しながら、裏ではドラックの売買なんかをやってる。ある日、ビリーが娼婦を惨殺、そして娼婦の父親から殺される。事件を聞きつけた兄弟の母(クリスティン・スコット・トーマス)がアメリカから参戦。ジュリアンに、復讐をしろ!と急かすのだった。ジュリアンは兄の敵討ちに乗り出すが、その前に地元を仕切る元警官チャン(ビタヤ・パンスリンガム)が立ちはだかる。
凄く殺気を感じる。ゆっくりした音楽、ゆっくりした動き、てか何も動かない場面が暫くあったりする。何、この静けさ?首筋辺りが、ぞわぞわする。これは殺気ですよ、殺気。何かが足音を忍ばせて、私に近付いて来てるような気がする。
ほら?野生の動物って、獲物にゆっくり近付いて行って、いきなり飛びかかるでしょ?そんな感じで、おっさんが日本刀をいきなり振りかざして、両手をばっさり斬り落とす。ほら!いたよ、野獣が!青と赤のチカチカするネオンの間に、野獣チャンが日本刀を振り翳して潜んでいる。困ったことに、この残虐なシーンが美しいんです。
このチャンは、正しく己がルール。裏社会の「神」なんです。ばっさ、ばっさと罪人を斬り、その後はカラオケで熱唱!斬り→熱唱→斬り→熱唱な、理解不能の新種の野獣ですよ。
でもヤバイと思って、急いで逃げようとするんだけど、後ろには無口なマザコン・サイコ野郎のジュリアンが、ファイティングポーズで立ってますよ。こっちも怖い。怖いけど、こっちが格好良いから良いか。いやいや、でもジュリアンの後ろには鬼母がいます。この鬼母は、息子達を近親相姦(と思われる)の縄で縛り、虚勢しているんです。クリスティン・スコット・トーマスの怪演は、素晴らしい。うちの鬼母とは比べものにならないくらい、素晴らしい。
あっちもこっちもで、ずっと首筋がぞわぞわしっぱなしですよ。
さて最後、このカラオケ好きな新種の野獣VS無口なマザコンサイコ野郎の対決となるのか、ならないのか?
いやー、なんか今だったら、アルセーヌルパンのように、針が床に落ちた音も聞こえるような気がする。そんな風に、感覚が研ぎ澄まされますよ。いや、研ぎ澄まさないと、どっちかに喰われますからね。
なんか良く分かんない。分かんないけど、何かが頭に入って来る。こんな感じ初めてです。
で、ラスト、こんなテロップが。
「アレハンドロ・ホドロフスキーに捧ぐ」
エル・トポの監督に捧げるのか。
ああ、そっか。だからもう、分かんなくて良いや。
もういいですよ、好きか嫌いかですよ。
私は、好き!