「これまでで一番。」R100 つかまるところさんの映画レビュー(感想・評価)
これまでで一番。
『R100』、公開前からやれ海外でボロカス扱いされたの、いろいろな悪い噂を耳にしており、
また過去の松本人志監督作品を観ても正直そんなにおもしろいと感じる心に残る作品はなかったので、ああ、またスベるんだろうなあ、とそんな感じで映画館に足を運びました。
何の映画かわからない、映像表現のセンスのなさしか感じさせないような中途半端な印象の予告編も、いつも通りの自信しか口にしないインタビューも、
そして何よりGoogleで検索すると1p目に出るここのレビューの悪評ぶりにも期待を根こそぎ奪われて、半ば動員数を一人でも増やそう、みたいなファン心理で足を運んだのですが、
意外に序盤からしっかりと映画らしく話が進んで行き、「あれ?これはもしかするともしかするんじゃないか?」と思っていたら本当に面白くなって行って、とうとう時間を忘れてラストまで一気に観れてしまいました。
おそらく少しネタバレをしないとこの映画のおもしろさは文章では伝えられないと思うので、以下少しネタバレを書きますので、R100を何のレビューも参考せずに観に行きたいという殊勝な方は戻ってください。
僕はこの映画は予告編の印象から、サスペンスめいたものを予感していたのですが、全然そんなことはなく、おちゃらけたコメディ映画です。
映画の設定としては、「『R100』という映画を、100歳の映画監督が撮影していて、その映画が糞ほどもおもしろくない」、という、ちょっと映画かじったことのある人がしきりに吹聴している"メタ"い映画ですが、これは本編の展開があまりにめちゃくちゃすぎ、時系列や数分前まであった設定も無視していくので、それならこれを100歳の映画監督が撮ったことにして、そのおかしな映画を観客と一緒に楽しむような映画にしてしまえば、2倍おもしろいんじゃないか?という配慮なのだと思います。
事実そんな感じで、時折挟まれる関係者らしい人が試写室から出て行くシーンは結構笑えました。
また不思議な表現の1つに、主人公(ドM)が女王様からお仕置きを受けるたびに、顔がふくらみ、画面に波紋のようなエフェクトがかかるのですが、これは実は伏線なので、なんだろう?と思いつつも結構気にして観ているとおもしろいことになります。
映画としてはかなりわけがわからない、映画の中で遊んでるような作品(007の最初の『カジノ・ロワイヤル』や『地下鉄のザジ』、ホドロフスキーの『ホーリー・マウンテン』、『監督ばんざい』みたいな感覚)なので、あらすじを追おうとか、全体から何かを得ようみたいな見方をするとこんがらがってきますが、漫才を聞くような気持ちで、次はどんなボケが出るんだろうと思って見ていると結構おもしろいです。ツッコミはちゃんと映画の中で絶妙な間合いで中の人がしてくれるので、その点も安心。
全国3桁のスクリーンで上映するような映画ではなく、いわゆるミニシアター系の作品で、こんな内容で8桁の人が入っているのは松本人志監督のネームバリューで、その中の楽しめなかった人たちのレビューで悪評まみれなのは当然なんだと思うのですが、映画好きの人がこの映画を逃してしまうのはおしいと思ったので、ちょっとレビューを描いてみました。
『大日本人』はかなり背伸びした映画で、『さや侍』で肩の力が抜け、この映画でようやくやりたい事を少しやれるようになってきた、という感じではないでしょうか?
おそらく松本人志監督はこの路線でしか映画を作れないので、次作もきっと悲惨な内容になるかとは思いますが(笑)、個人的にはぜひ期待して、次は宣伝をもっとしっかり考えて、好きな人だけを映画館に集められるようにすれば、実力も認めてもらえるのではないか?と思います。
最後に、オチについて、僕はMなので、また、R100という作品が100歳の人の作った100歳でないとわからない映画、ということを加味してあのオチはアリだなと思いましたが、あれ、許せない人は絶対許せないと思います。これは映画のおもしろさじゃなくて、なんというか人としてのモラルとして(笑)
また、ここまで未鑑賞でレビューを読んでくださっている方へ、嘔吐などの表現が絶対ダメ!という方にはかなり厳しいシーンが、割と長く続きますので、要注意です。これは僕もダメで、その間は目をそむけたりしていました。
とにかく内容はない映画なので、気張らず、気楽に観て、なんやねんあれ、わけわからんわ!と笑えば楽しい映画だと思います。僕は地元の大阪で観ましたが、大阪ではわりかしウケていましたよ。