偽りの人生のレビュー・感想・評価
全3件を表示
入れ替わりの人生
医師アグスティンは裕福な生活を送りながらも、妻とは険悪で空虚な気持ちを抱えていた。ある日、疎遠だった兄ペドロと再会、末期癌の自分を殺すよう頼まれ、その通りにする。人生を再出発させる為、兄になりすました事から…。
ヴィゴ・モーテンセン主演の欧州サスペンス。
一人二役…と言っても兄は序盤で死ぬので、その演じ分けが見もの。
古今東西こういう題材の場合、主人公はろくな目に遭わない。
コメディだったらとんだ災難に巻き込まれ、シリアスドラマやサスペンスだったら転落・破滅の人生へまっしぐら。
そもそも、何故あんな柄の悪そうな兄になりすまそうとしたのか、主人公の動機にピンと来ない。
お陰で、兄が関わっていた闇仕事の世界に足を踏み入れ…。
なので、最初からいまいち入り込めず、ずっと傍観者のまま。
多分これは、不満を思いつつも今の人生に甘んじている単なる楽観者の感じ方に過ぎないのかもしれないが。
もっとサスペンスにも出来たろうし、もっと重厚なドラマにも出来たろうし、今一つ題材の旨みを活かせないどっち付かず。
もうひとつの人生
一見何不自由ない生活を送っているかに見える医師のアグスティンだが、養子を迎えることで頭がいっぱいの妻との間には隙間が出来(アグスティンは養子など欲しくない)、医師としての仕事にも虚しさを感じていた。
そんな時に突然訪ねて来たのが、音信不通だった双子の兄ペドロ。
癌だというペドロはアグスティンに自分を殺して欲しいと懇願する…。
仕事に虚しさを感じていたとはいえ、アグスティンは医師だ。
その彼が人を、それも双子の兄を殺そうというのだから、そこには衝動というよりも、もっと強い動機があるはずだ。
その動機の根底には、アグスティンとペドロ、アドリアンを含めた関係性があるが、この関係性が分かりにくいので、アグスティンの行動までも唐突に見えてしまう。
ペドロが養蜂以外の後ろ暗い仕事にも手を染めていることにはアグスティンも気付いていたはずなのに、何故彼は、自分自身を葬ってまで、ペドロに成り代わろうとしたのか?
全編スペイン語映画であるにもかかわらず、まったく違和感のないヴィゴ・モーテンセンのスペイン語に驚いたが、
何でもかれは幼少期をアルゼンチンで過ごしたとのことでスペイン語は元々堪能。
父親の母国であるデンマーク語は勿論、イタリア語、フランス語、スウェーデン語、ノルウェー語も話せるという。
これからも様々な国、言語で、彼の活躍を期待したい。
全3件を表示