「熱狂的なファンの執念がむしろホラー。」ROOM237 さぽしゃさんの映画レビュー(感想・評価)
熱狂的なファンの執念がむしろホラー。
久しぶりに、すんごいのを観ましたよ。
おもいっきり勢いをつけてご紹介するので、皆様ちょっと頑張ってついてきてくださいますか?
本作はキューブリックの「シャイニング」の熱狂的なファンが、作品の中の不可解なシーンを編集上の単なるミスではなく、壮大な仕掛けとして読み解いて行くという素晴らしい内容です。
なんだかんだ細かい謎に言及しているのですが、大きなこじつけ、いや「謎」二点に絞ってお話したいと思います。
【散見される鷲の意味】
ちょっと気になっていたんです。鷲が。本作のメインの小道具と言えるタイプライターは「ADLER(ドイツ語で鷲)」製の物で、鷲のマークがついています。ジャックのTシャツは鷲柄で、支配人室の正面の窓際にも、向かって左の棚にも鷲の置物があります。
本作でもその点に触れているのですが、それ以外に少年ダニーが来ているトレーナーの右腕の柄「42」、駐車場に停めてある車の台数「42」台に言及しています。
結論からいうと、キューブリックは反ユダヤ主義だというんです。
あのー、反ユダヤ主義です!言い切ってみました。
あれ?初っぱなから遅れないでくださいよ!ついて来てくださいよ!
本作の根底にあるのは、ホロコーストなんです。何故ならナチがユダヤ人根絶を掲げたのが1942年だし、ナチの根絶活動の象徴的な小道具もタイプライターです。「シンドラーのリスト」を思い出して頂くと、確かにユダヤ人の名前をタイプするシーンが印象的でした。そして「鷲」はご存知の通り、ナチ(ドイツ)の国章です。
ジャックが、三匹の子豚を演じるシーンがあります。
「子豚ちゃん達入れとくれ」
「狼なんか入れないぞ」
「それなら俺の鼻息で、家など吹き飛ばす」
これ、1930年初頭のディズニーアニメ、「三匹の子豚」と同じです。キューブリックが生まれた1930年代初頭は、三匹の子豚は人種差別的でした。狼はユダヤ人の変装をしていて、バックに東欧のクレズマーやユダヤ音楽が流れていました。三匹の子豚は知恵を絞って、このユダヤ人っぽい狼をやっつけるのです。
つまり1930年初頭、ディズニーは反ユダヤ主義者だったのです。幼少期に培われた偏見を、キューブリックは持ち続けているのです。
あのー、皆さん!ついてこられてますか?諸々、突っ込みたい!?ええ、分かります。でも、すみません。強引に先に進めますよ。
【ROOM237の謎】
この部屋番号、覚えてらっしゃいますか?はい、そうです。美女と思いきや、腐敗した中年女性の霊がいる部屋ですよ。原作ではこの部屋は「217」号室となっています。変えた理由をキューブリックは、こう語っているんです。
「(モデルにしたホテルの)ロッジから要請があり、原作の217号室を237号室に変えた。ロッジには実際に217号室があって、(映画を観たお客さんが)怖がって敬遠すると言われたから」
しかし、ロッジには217号室はそもそも存在しません。これは、嘘なんです。キューブリックは、何故嘘をついたのか?
本作でジャックが妻に、こう繰り返します。
「ウエンディいい加減にしろ!」
「俺には雇い主に義務があるんだぞ!」
「契約を何だと思ってるんだ?協約をなんだと思ってる?」
まるで誰かを、言い含めるかのようです。
結論を先に言います。「2001年宇宙の旅」の制作は、月面映像を撮る為のプロジェクトだったんです!。キューブリックは政府から要請を受けて、アポロ月面着陸映像のねつ造に加担したのです。雇い主=政府、契約=政府との契約。だから、ねつ造をしなくちゃいけないんだ!だから俺を責めるな、「ウエンディ(妻)いい加減にしろ!」です。
はい。壮大になって来ました。まるで天下一強い武道家を決めていたドラゴンボールが、宇宙規模になった時みたいですよ。
えっと、あのー、すみません。もう少し、お付き合いください。
アポロ月面着陸の研究者が、一枚の写真に注目しています。青い小さい光が写っている、アポロ乗り組み員が撮影した宇宙の写真です。光りの反射が屈折したのか?エイリアンの巨大宇宙都市?しかし研究者は、この結論に辿り着きます。
「光の正体は、小さなライトの球がスクリーンに反射したもの。 フロント・プロジェクションの過程のものだ」
60~70年代にハリウッドにいた特撮のプロ曰く、フロント・プロジェクションでアポロの月面映像は撮れるとのこと。いや、あれ、フロント・プロジェクションでしょ?と。フロント・プロジェクションって、まさしく「2001年宇宙の旅」で初めて用いられた手法です。
さて、ここでシャイニングに話を戻します。
少年ダニーが来ているセーターの柄を、思い出してください。アポロ11号の打ち上げ柄です。ダニーはおもむろに立ち上がって、ROOM237に向かいます。
ROOM237のドアには鍵が刺さっていて、こう書いてある。
「ROOM No237」
この「ROOMとN」を組み合わせて作られる単語は二つだけ。MOONとROOMです。
つまりこのROOM237=MOON ROOM(月の部屋)です。一般的な科学の教科書によれば地球から月までの大まかな距離は、237000マイル(237)。さて整理します。
1)237号室は存在しない、嘘の月の部屋。
2) ダニーのセーターはアポロ11号柄。
アポロ11号が、嘘の月に向かうシーン=キューブリックが、例の月面映像が嘘ですよ!と言っているんです!
ダニー「ハロランさん237号室には何があるの?」
ハロラン「何もない。237には何もない。あんな部屋には用はない。だから近寄るな」
かなり勢いづいてみました(そうしないと耐えられませんでした)。
私も数回シャイニングは観てますが、それでも気付かなかったシーンが満載でした。
この熱狂的なファンは、全てのシーンを繰り返し、繰り返し、ガン見したのだと思います。
その執念が、もはやホラーです。
本作の評価をどうすれば良いのか悩むところですが、ただ一つはっきりしていることは、明日「シャイニング」をレンタルしてしまうということです。
では皆様、お疲れ様でございました。