ROOM237 : 映画評論・批評
2014年1月21日更新
2014年1月25日よりシネクイント、新宿武蔵野館ほかにてロードショー
悠然と謎めき続けるホラー映画に徹底検証を挑んだ面白ドキュメンタリー
巨匠スタンリー・キューブリックが「シャイニング」で本当に描こうとしたテーマは“ホロコースト”だ。いや彼の真意はNASAによるアポロ計画の“捏造”を暴露することだった……。学者や作家などコメンテーター5人が独自の「シャイニング」論を披露する本作は、こうした幾つもの珍説や妄説(?)が断言調で飛び出すドキュメンタリーだ。思わずポカンとさせられつつも滅法面白い。そもそも「2001年宇宙の旅」でも「アイズ・ワイド・シャット」でもなく「シャイニング」を俎上に載せるセンスが嬉しいではないか。
おまけに「ROOM237」という目の付けどころが秀逸だ。トランス家のダニー少年が何者かに傷つけられ、父親ジャックが全裸の美女と遭遇した237号室は「シャイニング」の物語の転換点となる妖気漂う空間であり、呪われたホテルの中核でもある。スティーブン・キングの小説では217号室だったこの部屋は、なぜ237号室に変更されたのか。劇中にはこの疑問に対する推理も盛り込まれている。
筆者のお気に入りは、ホテルの構造に関する物理的な解析だ。CGによる見取り図によって“存在するはずのない窓”を特定したり、ダニーが3輪車で走ったルートを検証。これはもはや一般の映画ファンさえもDVDで何度も再生、一時停止、ズームアップが可能になった時代に、生まれるべくして生まれた作品といえよう。しかも「シャイニング」に魅せられたコメンテーターたちの言葉は、味気ない重箱の隅突きのレベルをはるかに超え、このホラーの異様さ、不可解さを改めて印象づける。まさに本作はいくら濃厚な深読み合戦を繰り広げても、なお悠然と謎めき続ける映画の魔力を証明するドキュメンタリーでもあるのだ。
(高橋諭治)