パッションのレビュー・感想・評価
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「ボディ・ダブル」の夢、再び!って本気ですか?
モレッツの「キャリー」は、モレッツはどう見ても、いじめっ子のほうでしょう、なキャスティングの時点で、とてもオリジナルをリスペクトしているとは思えないのだが、ジュリアン・ムーアが母親役で出るので、ちょっとだけ期待している。
そのオリジナルのデ・パルマの代表作って何だろう?と考えると、
しんざん調べだとすると
5位:「ファントム・オブ・パラダイス」「殺しのドレス」
4位:「ミッション:インポッシブル」
3位:「アンタッチャブル」
2位:「スカーフェイス」
1位:「ボディ・ダブル」・・・じゃなくて「キャリー」
という感じか。
(あくまでしんざん調べ)
おそらく「キャリー」だけが突き抜けて、あとは世代で割れる、といったところだろうか。
世代で割れるという意味では、アンケートの傾向としてはスピルバーグとおんなじかもしれないが、スピルバーグのほうがほんのちょっとだけ品があるかな。
ちなみに俺は「キャリー」「スカーフェイス」「カリートの道」推し(もちろん「ボディ・ダブル」も。てへ)
しかし「キャリー」は実は萌えなシシー様、「スカーフェイス」はトニー・モンタナ、「カリート」はカーリーヘア・ペンの功績だと思う。
実際、デ・パルマって「アンタッチャブル」のレビューでも書いたけど、彼の作品群をみると、結局、個性的な映像やカメラワーク、ヒッチコックを崇拝した演出、どうでもよくって、デ・パルマ=個性的な映像作家とは今ではとても言えない。
でそのどうでもいい部分を夢よ再び?と、外資で作った(作らされた?)のが本作。
まあ、初めから夢などないのだが。
そんな30年前になんだかんだ騒がれたスタンスで映画を作る姿勢はどこかの酔狂がお金を出したからにすぎないだろうが、それを本当に真剣にその当時のまんま(ホントまんま)の映像美学(てへ)を繰り広げている。
そこは心を大きく持って拍手を送ろう。
俺なんか30年前っつたら、10歳だ。とてもまねできないね。
本作、よくあるちょっとしたエロチックなDVDスルー作品、と言って100%間違いでない。パッケージはそう見えても、中身は全然エロチックではないけどね。
こんな普通の、昼ドラな題材を、なぜデ・パルマが、と見た人は思ったかもしれないが、そうではない。
デ・パルマが普通なだけだ。
ある意味デ・パルマ監督らしさ満載
あまり興味がないジャンルだが、ブライアン・デ・パルマ監督作品ということと、レイチェル・マクアダムス主演ということで、迷いながらも鑑賞。
ヒッチコック風に仕上げたのかも知れないが、うーん…個人的にはいまひとつ。オチもよくわからない。どこまでが現実でどこからか幻想なのか…(汗)
デ・パルマカットの一種と言っていいかどうかわからないが、テレビドラマ風の映像は、ある意味雰囲気が出ていて良かったかも。
こんな感じも、デ・パルマ監督らしさというところか。
後半からてんやわんや、
レイチェルはいつもかわいい(笑)、悪女役でもかわいい。
そんな主人公の彼女が、部下をハメて潰そうとする。
でも後半からがあれこれあって、さらにハメられたのか、誰がどうだましてるのか、どうなのか、と、なんかよくわかんなくもなった。
悪くない設定、悪くないストーリーかとは思うし、嫌いではない展開だったけど、んー、俺にはもうちょっとわかりやすかったらありがたかったかなー。
興味深くハラハラ?みたいなこともあるけど、登場人物は多くなくても、女性同士のチューとか妬みとか、変にいろんなものがあっててんやわんやなかんじだった。
結局、夢のシーンなのか、刑務所に入ったのか、双子の姉妹はホントにいたのか、、、んー、俺の理解力がなかったのか、なんなのかわからんとこもあって。。。
ポリーナ・セミオノワ!!!
最初に断っておくけど、星5つは偏愛によるもので、自分でもちょっとどうかと思う。以下の感想もかなり個人的趣味に走ったものなんで、いろいろとゴメンナサイな内容です。
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この映画観て一番驚いたのはポリーナ・セミオノワが出ていた事!!
観るまでそんな隠し球があるなんて全然知らなかった!!
ポリーナ・セミオノワ、現在アメリカン・バレエ・シアターのプリンシパル。
(日本ではユニクロ、スズキ・スイフトのCMで有名。)
その今をときめくポリーナが、映画後半のバレエシーンに出てくる。
正直、映画前半は「古っぽい映像だなあ」とかなりがっかりしていた。
でもポリーナが出てるんなら話は別です。それがたとえ短くても二分割でも。
こんなゴージャスなサービスってあるだろうか?
ポリーナ美しすぎる!!
しかも踊ってるのがジェローム・ロビンズ版『牧神の午後』!!!
(何年か前の来日時にも踊ってた。目にする機会の少ない演目なので本当に嬉しい。)
そして、この映画、このバレエが中心といっても過言ではないのであった。
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ジェローム・ロビンズ版『牧神の午後』という演目は、
ダンサーから見た客席側が「鏡」という想定になっている。
ダンサーは鏡を(実際には客席を)凝視して踊る。
ダンサーが視ているものは何なのか?鏡?客席?虚像?実像?
この映画、「視ているものは何か」がテーマの一つである。
そして映画後半の話は
虚像?→実像→虚像?といった展開になっている。
悪夢と現実が入り乱れ
まさに観客が「視ているものは何?」といった様相をみせる。
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『牧神の午後』という曲自体は、「まどろみ、夢」が主題。
悪夢→現実→悪夢と繰り返すこの映画、ラストは悪夢パートで終る。
夢から醒めていない所で終わるので、何が実際に起こっていたのか?という結論は示されていない。
というか結論の出しようがない。
夢オチってあるけど、まさかの夢から醒めないオチ。
そういえば映画冒頭から『牧神の午後』の看板が街中に貼ってあった。
デマルマは冒頭から
「これ、夢(牧神の午後)の話なんでそこんとこヨロシク」
と、宣言してた訳である。
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この『パッション』という映画、『ラブクライム偽りの愛に溺れて』のリメイクである。
(前半部分はほぼ一緒。バレエシーンはパッションのみ。)
『ラブクライム』の方は
0Lのイザベルが自分を虐めた上司を殺害。完全犯罪を成し遂げたと思っていたら、部下に秘密を知られ呆然とする。という所で終わっている。
『パッション』は、その後のイザベルも描く。
罪を犯し秘密を暴かれたイザベルが視たであろう悪夢を付け足している。
『ラブクライム』がミステリとしては最適な所で終わっていたにも関わらず
あえて付け足し
「オレの考えるサスペンスってこういうのだっ!」というデパルマの荒い鼻息が伝わってくるようで…。
デパルマの鼻息が詰まったラストシーンは流石に濃く臨場感があった。(映画の前半部分は薄ぺったいなあと思ってしまったが…。)
鼻息の方向性が、かえって老いとか古さとかを醸し出しちゃってる気もするが、もうそういうのも含めてバイアスがかかった私には面白い!と思えるんであった。
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でも何と言ってもデパルマの鼻息荒いヒッチコック愛に、
私は呆れるのと同時に、ちょっとシミジミした。あんた、そんなにヒッチが好きなのか?と。
「客席を凝視するダンサー」がこの映画には出てきた。
「客席を凝視するダンサー」がテーマの映画といえば、
ヒッチコック『引き裂かれたカーテン』を思い出さない訳にはいかないんである。
『パッション』も『カーテン』もドイツが舞台。
ヒッチ先生もバレエが一番視覚的で映画に似てると言っている。
だからといって、失敗作と言われている『カーテン』をわざわざ真似なくても良かったのに…。
っていうか、『カーテン』の真似がしたくて、このモチーフにしたのでは?とも勘ぐってしまう訳だが…。
ヒッチとかバレエとか観客にとってはどうでも良い事に夢中になっているデパルマの愚直さに泣けてくる。
誰か止めてあげてとすら思うデパルマのヒッチコック愛。シミジミするしかない映画であった。
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長々どうでもいい事を書いて本当スイマセンって感じだが…
『牧神の午後』×『引き裂かれたカーテン』×フレンチミステリって、
好きな人にはたまらない組合せだったけど(需要なさそうな組合わせだなあ)、
そうじゃない人にはほんとに辛い組合わせなんだと思う。そんな映画でした。
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