「ロシア製バトル・エンターテインメント」オーガストウォーズ odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
ロシア製バトル・エンターテインメント
オーガストウォーとは2008年8月7日に起こった南オセチア紛争の別名である。ジョージア国内の非政府支配地域である南オセチアを巡るロシアとの紛争、双方とも先に相手が仕掛けたと主張しているが巻き込まれた民間人はたまったものではない。ロシア映画なのでロシア寄りに描かれるのは当然なのだが企画の立ち上げに政府の関与があったのかは不明、おそらく欧米での興行性を踏まえた上でロシアのVFX技術を活かしたハリウッド風のジュブナイル向けバトル・エンターテインメントづくりの企画が先行し身近な紛争を舞台に借りたとも思えます、それでもロシア軍の全面協力を得て製作された映画であることは間違いない。
グルジア侵攻に躊躇するロシア閣議の様子や母子を助けるグルジア人兵士を入れるなど欧米からプロパンダ映画と言われまいとする配慮も伺える。
プロットは南オセチアの離婚した夫の実家を訪れている息子が紛争に巻き込まれそうなことを知り、モスクワから母が救出に向かうのだが既に戦火に覆われ困難を極めるというお話。離婚夫婦と子の話はアメリカぽいと思ったらロシアの離婚率は世界一らしい、マザコン男性が多く女性が強いのもお国柄のようです。
アバンタイトルのバトルシーンは秀逸、VFXも巧みでエンターテインメント性が高いことは間違いないのですがコンセプトとしてどうなのでしょう。
実戦も子供の空想戦闘ゲームのようなフィクションを合成して悲劇性を薄めているようにも思えますが実際にあった戦争の描き方として不謹慎とも思え、違和感は拭えませんでした。
ただ無神経かと言えば、子犬を守ろうとした母犬が死んでいた様のインサートなど胸に刺さるシーンもあり、子供たちに現実と遊びの世界の異なり、違和感を抱かせること自体が狙いであったとすれば自身の見識の浅さに恥じ入るしかありませんが・・。