劇場公開日 2000年8月19日

「マフマルバフ監督の特集上映で、観る機会に恵まれました。 アテネフラ...」サイクリスト woodstockさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0マフマルバフ監督の特集上映で、観る機会に恵まれました。 アテネフラ...

2025年6月21日
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鑑賞方法:映画館

興奮

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驚く

マフマルバフ監督の特集上映で、観る機会に恵まれました。
アテネフランセ文化センターにて。

アフガニスタンからの難民一家。
入院中の妻の医療費を稼ぐべく、七日間不眠不休で自転車をこぎ続けようと挑んだ男性の物語。

本人の必死に取り組みとは裏腹に、
周囲の人々は、自転車そっちのけで各人の思惑で動いてばかり。

入場料を取るひと、賭けるひと、
救急車、薬を盛ろうと企むひと、
お茶や軽食を売るひと、催事の合間に広告フラッグで歩き回るひと、
純朴な観客(どうやらアフガン人)、
日給いくらでアフガン労働者を募る人 & つられていく人々、
etc.

自転車にて、三日目の夜あたりに一度は倒れたものの、
こっそり代役がスカーフで顔を隠して乗車続行、
同時に寝ていたレフェリーらにはバレることなく。

自転車乗りさん、
最初は妻のため、生死をかけた義務感で、悲壮感だらけに見えたものが
日数を重ねるごとに、徐々に精悍に、あるいは崇高にすら見えるように。
そう見えるよう、撮影時には、メイクを日ごとに塗りなおしていたとうかがいました。

1989年のイラン映画。当時アフガンは貧困で、
イランに移ると、二束三文で日雇いが常態化していた様子。
病院でも、日々前払い、アフガン通貨は受け取ってもらえず、イラン通貨(リヤル、トマン)を払いなさいと。

ヌーヴェル・ヴァーグの描写、風刺の強さ…
学ぶところが多い、もしかして一度の鑑賞では気づききれてないところも多そうな
驚きの作品でした。

私事ですが、以前にテヘランを散策した際(2018)
街でみかけた風刺絵のたぐいは、大半は "アンチ米国" にみえました。
対米だけではない、国境を接する隣国間、あるいは国内の内輪の事柄なども、あってもおかしくないでしょうね。

woodstock